彼女はぼくを誤解していた


 23歳で数学科学生のぼくの仕事を、彼女に当てさせると、

「29歳の、東南アジアの研究者」という、見事な返事が返ってきた。





 <<解説>>

 彼女はいつも、丁寧語ではなく尊敬語で話しかけてきた。
「私とは2つ3つしか違わないのに、落ち着いてお話になりますよね」

 というので、ぼくは、
「やめてよ。そんなに違わないよ。せいぜい違っても1つだよ」と答えていた。



 当時23歳のぼくにとって、
給仕の仕事が板についている彼女が、2つも3つも年下であるはずがなかった。


「でも私と同級生の男の子たちなんて・・・・・・」なんて言われる度に、

 いい気になって、
「慣れだよ、慣れ。実際の年なんてそんなに離れていないよ」などと答えていた。





 何となく、外に誘い出した方が良さそうな雰囲気になったある日、
「私、12年前に引っ越して、その時、まだ14だったんですよ」と言われた。


 ・・・・・・ごめんなさい。12年前、ぼくはまだ11歳でした。
今さらになって真実を打ち明ける勇気は、どこにもありませんでした。





 「下北沢で行く店は東南アジア系の店が多い」と書いた。


 沖縄は、ぼくにとって特別な場所なのだが、
「公文国際学園の中学時代の調理実習で、東南アジア系の料理を作った記憶」


 うん。ふと思い出したのだ。
公文学園研究に書いた、「国際理解教育」の一環として、東南アジアの料理を・・・・・・

 なるほど。世の中、偶然なんてない。


 有名どころの東南アジア料理は、ほとんど中学時代に作ったのだ。



 そういや、高校時代の家庭科の記憶。
宿題で作ってきた「一日の献立表」を、自習時間に女の先生が採点していた


 先生が、突然高い声を挙げて、笑い出す。

クラス一同 「? ? ?」

O先生 「岡澤君、お酒はダメですよ〜」