大黒屋天麩羅
井の頭線東松原のところにも、
「10年前の毎日新聞縮刷版を見てやってきた」
という時代錯誤な話が登場するが、
わりとお気に入りのこの天丼も、
「田中康夫の『なんとなく、クリスタル』(*)を読んでやってきた」
という、かなり時代錯誤な出会いである。
80年代の文化史を少々学んでおく必要に駆られて読んだだけだが、
ホイチョイの映画を探し始めるほどのめりこんで学習したわけではない。
読んだのは大学3年の終わり頃で、
「イブ・サンローランって、元はクリスチャン・ディオールの専属デザイナーか」と、
時代考証の勉強なのでそのくらい詳しく読んでいた。
だから、物語の舞台としてこの店が登場したわけではないが、
ほんの一言触れられただけが気になって、一年ほどして実際に行ってみた。
* ディスコで知り合った男の子とラブホテルに行くだけの話の気もするが、
豊かになった時代を象徴する言葉と注釈が集約された、80年代研究には必読の書。