平然と、アルバトロスを決める岡澤。 
だが今になって思うと、岡澤を詐欺で捕まえるための撒き餌だった気がする。
  
 岡澤の言い訳は、妄想的な大胆さを誇り、 
「妊娠6ヶ月の彼女が怪我をして、○○まで迎えに行かなくてはならない」だった。
  
 職務質問で、いい加減な応答を繰り返し、 
疑問を持った警察官が調査をして、犯罪の疑念を抱くのは当然だと思っていた。
 
 
  
 −しかし、金は貸してくれた−
 
 
  
 岡澤が別の用途に金を使ったと判明したら、 
その瞬間に岡澤は詐欺罪で現行犯逮捕、警察は金を諦めるという流れである。
  
 逮捕状請求に失敗した次は、現行犯逮捕。 
警察実務の問題としては、この展開が最も多いパターンという気がする。
  
 だが、警察の裏をかく岡澤。 
何の罪悪感もなしに、本当にその仮想彼女に会うために、○○行きのチケットを購入。
 
 
  
 これでは、詐欺罪現行犯でない。 
「○○に行く」という主要な動機に嘘がない以上、詐欺罪の成立は難しいだろう。
  
 岡澤の勝ちだが、あまり美しくはないな。 
振り上げた刀の降ろしどころをなくした警察官は、とりあえず岡澤に任意同行を求める。
  
 「なぜ○○に?」と思うかも知れないが、 
県警を信用していない岡澤は、警視庁の直接監視下から抜けたくなかったと。
  
 
 
  
 あ、でも、これは岡澤の理屈の勝ちだ。 
刑事施設の目的は犯罪者の収容だけでなく、政治犯の生命の保護目的もあるから。
  
 だから、○○で手荷物検査を受けたとき、 
「訴状」と「催涙スプレー」が一緒に出てくるという不思議な展開になったのである。
  
 さて、それでは、ここで問題です。 
嘘に嘘を重ねて逃げてきた結果、最終的に真実に至ったのはどういう理由なのでしょう?
 
 
  
 答え : 論理学の原則に忠実な嘘だから。
 
 
  
(*)・・・・・・単行本第十七集 第百六十九話「ジェレミーとドラコンの卵」
 
 
  
 
 
  
 
 
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