走れメロス


暴君 「愛や正義だけで、探偵事務所を作る男がいるか!」

暴君 「ほら見ろ、金欲しさに有印私文書偽造で少額訴訟を起こした」

暴君 「500万も反訴されてみろ、泣いて謝っても知らんぞ!」







 亜友が退学の危機になった。
「佐藤玲奈を殺したのは亜友の母親じゃない。退学を撤回しろ!」と岡澤

 亜友の身代わりに、捕まる岡澤。


暴君 「お前も、実にいい身分なものだ」

岡澤 「何を言うか。玲奈は殺されたんだぞ!」

暴君 「働いても貧困から抜け出せない日本人が多いなか、お前は働かなくて良い」


暴君 「そして、亜友の身代わりに捕まったお前には、多額の報酬が約束されている」

岡澤 「お前に、玲奈を殺された苦しみが分かるか!」

暴君 「お前の方こそ、働いても楽になれない苦しみが分かるか!」

岡澤 「いくら働いて金を稼いでも、愛や真実は買えないんだ」

暴君 「お前だって、金が欲しくて政治家に情報を流したんじゃないのか?」

岡澤 「ぼくの探偵事務所は、金では買えない真実を暴くためにあるんだ」

暴君 「分かっておる、分かっておる。口ではどんな清いことでも言える」




忠臣 「恐れながら王様。あの男が、嘘を申しているようには思えません」

暴君 「愛や正義だけで、探偵事務所を作る男がいるか!」

忠臣 「しかし、全ての人が金のために働いているわけではないと考えますが」

暴君 「口ではどんなことでも言える。お前たちも、選挙が近づけば言うことが変わるものを」


官僚 「王様。あの探偵事務所の男に、有印私文書偽造の疑いがかけられました」

暴君 「ほら見ろ、金欲しさに有印私文書偽造で少額訴訟を起こした」

忠臣 「しかし・・・・・・」

暴君 「500万も反訴されてみろ、泣いて謝っても知らんぞ!」

官僚 「王様。あの男が、12月8日の午後2時より、法廷で反対尋問にかけられます」

暴君 「あの男の処刑が、12月8日とは面白い。どんな命乞いをすることかな」 (*)



 −そして、反対尋問当日−

岡澤 「まだ日は沈まぬ。金で買えない真実は存在する。亜友はきっとくる」

亜友 「岡澤・・・・・・」

岡澤 「亜友・・・・・・」

判事 「王様の反訴請求を、棄却します」

忠臣 「なんだ王様は。自分が子分を金で飼い慣らしているからって、国民の心を疑ったのか?」

暴君 「法廷で争っている。今は、それ以上説明する必要はない」

忠臣 「政治倫理審査会に王様を呼べ! 非公開で袋だたきだ!」

暴君 「総理となら会ってもいい」


 −現代日本では、「走れメロス」も美しい終わり方をしないね−


(*)・・・・・・1941年、旧日本軍が米国の真珠湾に攻撃を仕掛け、太平洋戦争が始まった日です。