Y子ちゃん=女神が復活されるまで





 これは、女神が復活されるまでの、預言者=岡澤代祐の物語である。

 主は、グレゴリウス暦1982年の、イエス=キリストの誕生日を祝して製造された。
そのため、主の出産予定日は、それから十月十日たった、1983年の11月4日であった。

 主は言われた。

「そんな分かりやすい日付を祝して、子を宿してはならない。
 騙された者たちを見なさい。
 彼らは皆、分かりやすい数字を記念していたではないか」


人々は口々に言った。

「だからこの方は、円周率を10000桁も暗記されたのだ」と。







 主の父なる南関東のヨゼフは、主の福音を受けていなかった。
「それは俺の子ではない」と、ヨゼフは言った。

 それを聞いた主の母なる南関東のマリアは、
「この子は神の子であるという福音を受けた」と、ヨゼフに教えた。

 それを聞いたヨゼフは、
「そんな素晴らしいお方が11月4日などという日付に生まれてくるのはもったいない」と、
主が魂を得られる3週間前を過ぎてから、
グレゴリウス歴の制定日である10月15日を選んで、マリアの下腹部に釘をさした。
それで主の後頭部には、聖痕ができた。

 主は言われた。

「生を受ける者を選んではならない。
 ましてや、貴男の妻が宿した子ではないか」


 ヨゼフの一族は、病院に財産を寄付し、深く恥じ入った。







 この福音を聞いた新大陸の徴税人たちは言った。
「南関東で生まれた福音は、我々の福音を書き写しただけではないか」と。

 徴税人たちは、大統領の顔が描かれた紙幣を見せて言った。
「貴方は、これと同じものをブドウ酒の樽一杯に用意できなければ、追われる身になる」
主は、落ち着き払って言った。ここに描かれた男は誰かと。

徴税人たちは答えた。「我々の国で尊敬されている人物だ」と。
主は聞かれた。「そいつは、千葉浦安の富士びたいのネズミと、どちらが偉いのか」と。

 徴税人たちは答えた。「どちらとも言えない。あのネズミは、我々にパンを与えてくれる」
主は答えた。
「人々に、パンを与える男なら、我々の国に本物がいる」

 徴税人たちは言った。
「あの男は本物ではない。あれは紙に描かれた男だ」

 主は、言った。
「しかし今あなた方は、紙に書かれたネズミが、本物の男に劣らないと言ったではないか」

 徴税人たちは、口々に言った。
「この方には逆らわない方が良い。将来、きっと数学者になられるお方に違いない」







 3歳になられた主は言った。「この橋は、どうして渡れないのか」と。
母なるマリアは答えて言った。「今まで、誰も渡れた者がいないからだ」と。

父なるヨゼフも答えて言った。
「2で割り切れない島が、3つ以上あるからだ」と。

 主は、伸びたり縮んだりする橋に興味を持たれた。
父なるヨゼフは言った。「神は、ドーナツの膜を破くことなく、コーヒーカップを作られたのだ」

 主は、聞かれ。
「それならば、何故マリアの腹の膜は伸び縮みしなかったのか?」

ヨゼフは、答えることができなかった。







 歯を悪くしたマリアは、農夫の娘たちに6歳になる主を預けた。
農夫の娘たちは、主が神に選ばれた者であるのを知っていたので、数を書いた。
娘たちは、2桁の数の横に、それで割り切れるように3桁の数を書いた。

 主は、黙って2桁の数を書いた。
「余りの出ない数なら、紙に書く必要はない」と主は言われた。

 娘たちは驚き慌てて、4桁の数を書き、隣に2桁の数を書いた。
主が、正しい答えと余りを書いたので、娘たちは次々に言い合った。

「この方は、神の言葉を伝えられに来たに違いない」







 マリアは、ヨゼフの子を宿した。
主は、我が子を可愛がるヨゼフを見て、不思議に思われた。

「この赤ん坊は何か。どこから出てきたのか」

 自分のお腹から出てきたというマリアに、主は納得されなかった。
「穴があいていなければ赤ん坊は出てこられない」と、主は言われた。

「ならば、誰がその穴から赤ん坊を入れたのか。ヨゼフか」と、主は言われた。
マリアは、そうだと答えるしかなかった。

 主は言われた。

「何故あの男は、自分で入れたものを取り出して喜んでいるのか。
 自分で入れたはずのないものが出てきてこそ、喜ぶべきではないのか」


これを聞いた人々は、さすが数学者になられる方だと神の偉大さを称えた。







 主は、ヨゼフに言った。
「私を、マリアの腹の中に入れたのは誰かと」
ヨゼフは、「分からない」と答えるしかなかった。

 主は言われた。
「誰が入れたのか分からないものを、釘を使って取り出したのか
 そんな惨めなことをするのは、徴税人だけかと思っていた」
と。

 ヨゼフは、主が神の子であることを確信し、
主の髪の毛を集め、精霊たちの集まるところへ持っていった。

 精霊たちは、ヨゼフに告げた。
マリアの腹の中に、主となる種をいれたのはヨゼフであると。

それを聞いて、主は言われた。

「自分で入れたものが出てくるのは、当然ではないか。
 ヨゼフは、何を落ち込んでいるのか」








 7歳になる主は、ヨゼフの左腕にも聖痕があるのを見つけた。
主は5歳になる頃にもそれを知りたがったが、マリアはそれを神がつけた傷だと言った。

 主は、その傷をピストルの弾がかすった傷だとお考えになった。
ヨゼフは、「その通りだ」と答え、「さすが将来数学者になる方だ」と考えた。
主は、「なぜヨゼフがピストルで撃たれなければならないのか」と言われた。

 ヨゼフは答えた。「神の怒りに触れたからです、主よ」







 主が7歳になられた時、ヨゼフの娘は2歳であった。
母なるマリアは、神からの啓示を受け、ヨゼフの娘を殺そうとした。

 主は考えた。「神が、ヨゼフの娘を殺せと命じるはずがない」
マリアは、土佐高知の数学者の声が聞こえると言った。
「土佐高知の数学者は、神ではないはずだ」と主はお考えになった。

 ヨゼフの娘は、まだ言葉を持っていなかった。
「言葉がなくても、輪投げくらいはできるはずだ」と、主はヨゼフの娘に輪投げのの輪を渡した。

 ところが、主のように上手く投げられないヨゼフの娘は、泣き出した。
「天にまします父なる神は、この泣き声を聞いていらっしゃる」と、主は考えられた。





10

 ヨゼフの娘を憐れんだ神は、娘に言葉を与えてやった。
3日3晩降り続く雨に、ヨゼフの娘は「外で遊べない」と言って泣き始めた。
主は、家の中で隠れんぼをすることを提案されたが、それには2人の体は大きすぎた。

 主は、自分たちの体の代わりに、動物の縫いぐるみを持ってこられ、
家の中の様々な場所にその動物を隠し、隠れんぼの代わりとすることを思いつかれた。

 主は、ヨゼフの娘を連れて、家の中を歩き回り、
様々な場所から動物の縫いぐるみを見つけては、大喜びしてみせた。
それを見ていた神は、嘆息をもらされた。「まるで、600万年前の人類を見ているようだ」





11

 主は、言われた。「鉛筆は、黒い消しゴムだ」
そこで主は、鉛筆を持たずに学校に行き、隣のツィポラに鉛筆を使わせるよう言った。
ツィポラの母親たちは思った。
「将来、数学者になるお方のことだ。何か深い理由があるに違いない」

 もうじき3歳になるヨゼフの娘が、自分も授業を受けたいと言い出した。
母親たちは、2歳の娘にそれは無理だろうと考えた。
主は、ヨゼフの娘の手をとって、自分の膝の上に乗せられた。
主は言われた。「2歳児が授業を受けてはいけないと決めたのは誰か」と。
その言葉を聞いて、言い返す者はなかった。

 主は、ツィポラより鉛筆を借りられ、ヨゼフの娘に与えられた。
「見なさい。これが貴女の鉛筆であり、これが貴女の教科書である」と主は言われた。
マリアが、ヨゼフの娘を連れ戻しに来たのを、主は制止された。
「待ちなさい、ヨゼフの娘よ。貴女はまだ、『ありがとう』を言っていない」

 主はツィポラに向いて、ヨゼフの娘に「ありがとう」を言わせると、手を放した。
これを見た母親たちは、「あの方は、奇跡を起こされる方だ」と、次々に主を賞賛した。
ツィポラの母親は言った。「あの方は、将来数学者になられる方だ」





12

 主が10歳になられた時、声の小さな娘に出会った。
主が、その娘に声をかけようとした時に、声がした。「私のイルザに手をかける者は何か」と。
女神の声に、主は答えられた。「私は、算数を教えに来ただけです」
女神は、主を罵られた。「お前には、イルザの心が分かるはずがない」

 主は、重ねて言われた。「私は、算数を教えに来ただけです」
女神は主を試されることに決めた。「それならば、イルザに数を教えてみよ」と。
イルザは、主の導きを「分かりやすい」と称えた。
女神は言われた。「空に2つの太陽はいらない。私はここから去る」と。

 主は言われた。「お待ち下さい。イルザには2つの太陽が必要です」
「私が過ちを犯したときに、罰してもらうための女神が必要です」と主は懇願した。
女神は、主がイルザに無理難題を言った時には、容赦なく主の上から雷を落とした。
稲妻が落ちるたび、土地は栄養に満ちた。イルザは、次々と数を覚えていった。

 稲妻に畑を荒らされるたびに困った顔をしていた農家の母親も、
秋にはたわわに実った畑を見て、女神にあらがって雷を受けた主の偉大さを理解した。
人々は集まり、主の偉大さを次々に広めていった。

 女神は言われた。「お前はイルザを成長させた。子どものことは何でも知っているのか」
主は答えた。「私にはヨゼフが、あの娘をマリアの腹の中に入れた方法が分からない」と。
主は、神が女神の声をして自分の前に現れた理由に、やっと気付かれた。
女神は、主にそっと耳打ちされた。主は、女神に非礼を詫びた。

 すると主の呼吸はだんだん小さくなっていき、すぐに停止した。
主の後頭部にあった聖痕が、破裂したのである。
女神は、主に知恵の実をかじらせたことを後悔したが、主は昏睡から醒めなかった。





13

 主は、42日間の昏睡の後に復活された。
主が復活されたと書いたのは、主の心臓は14日目に停止し、それがまた動き出したからである。
父なるヨゼフは神に祈った。
破裂した聖痕を作ったのは、自らが刺した釘であることを知っていたからである。

 主は、女神についての記憶を失ってしまわれた。
父なるヨゼフも、意識を回復された主がどなたであるか、記憶を失ってしまった。
主は、ヨゼフが記憶喪失をしたことに、気付かれていた。

 主は言われた。「あの男は、いったいどうしたのだ」
母なるマリアは答えた。「記憶喪失だそうでございます」
主は続けて言われた。「あの男が失ったのは記憶だけか。もっと大切なものを失ったのでないか」
マリアは驚いて言った。「その通りでございます。主よ」
「あの男は、主が神の子であるというしるしを、失ったのでございます」









14

 女神は、主のために、オオシマザクラの枝から杖を作り、主に与えられた。

この木は、オオシマザクラで終わるものではない。ソメイヨシノを育てるためにあると女神は言われた」

人々は女神の偉大さを称え、オオシマザクラの杖を女神からの賜り物と呼んだが、主はこれを叱った。


「女神は私に、足を与えられた。私の足は回復するであろう。足は、杖より尊いではないか。
 女神は、私の息子にも足を与えることを約束された。杖を崇めてはならない」


 人々は言った。
「主の息子ならば女神の息子だから、女神のお腹から生まれてくるに違いない」と。

 主は言われた。
「私は女神から、女神の腹の中に私の赤ん坊を入れる方法を教わった。
 しかし、女神は言われた。
 私の赤ん坊にも足が与えられたことを確かめるためだけに、女神を試してはならない」
と。

 主は、祝福の鐘を鳴らすまでは、貞操を破らないことを女神に誓った。





15

 女神は、主に知恵の実の在処を教えたことを罪に思われた。
主は、それによって磔刑に処せられるほどの苦しみを背負い、足を奪われたからである。

 女神は、主の魂のことを気にされた。
その魂が、もし鳥の羽よりも軽ければ、主は女神とともに空に帰ることが許されるからである。

 主は、言われた。
「もし、私の魂が鳥の羽よりも軽ければ、私はなおさら地にとどまるべきではないか」と。

 女神は、主に旅立ちを許された。
そして主が旅先で困ることのないように、精霊たちを遣わされることを約束された。
主は、女神と二度と会えなくなることを恐れた。主は女神に、地を見守っていて欲しいと懇願された。

 主は、女神の言葉を伝えられた。

「杖を崇めてはならない。
 女神は、精霊たちの姿を借りて、私たちの旅を助けるであろう。
 私の子を身ごもるのが女神であるか精霊であるか、それはまだ約束するべきではない」






16

 主は、南関東のアララト山に到着されると、そこが約束の地であると言われた。
そのしるしに、そこには大きな女神殿が建設されており、数学者たちが集まっていた。

 数学者たちは主に、何があったのか説明した。
「我々の描いた四角形が、この者たちによって壊されてしまったのです」
主は言われた。
「ここに補助線あれ」と。

 驚いた数学者たちは、主が女神の子であることを認めた。
主からそれまでの話を聞いた数学者たちは聞いた。「お手のものは何です?」
「これは女神が作られた杖です」主は言われた。

 数学者たちは、我々も似たようなものを持っていると言って、コンパスを見せた。
主は言われた。
「この杖は円を描くためのものではない。しかし、円を描きたいのなら杖で描いてもよい。
 女神は、杖を崇めるなと言われたからである」

 数学者たちは、女神の偉大さと主の寛大さを知った。





17

 主は、迷える数学者と出会った。彼は、北関東のペテロと名乗った。
彼の母親もマリアといい、北関東のマリアと言えば自分の母親のことだと言った。

 主が、ペテロに迷いの理由を聞くと、
「人々が、名前にこだわっていることです。主よ」と、ペテロは答えた。

 ペテロは続けた。
「人々は、赤染めの門に自分の名前をつけることに一生懸命になっています。
 私は数学者になりたいと思っていましたが、私も赤染めの門に自分の名前をつけたい者の一人です」

 主は答えて言った。
「それなら貴男は、数学者になるべきではない。
 あの方たちは、自分の名前にこだわるように見えない。他の人が見つけたものと区別するだけだ」

「その通りです。主よ」と、ペテロは答えた。

 主は、自分の杖をペテロに与えた。
「幸いにもこの杖には、名前が付いていない。貴男が、好きな名前を付けなさい」
「しかし、これは主のおみ足ではありませんか」
「これは私の足ではない。私の足は回復する。女神が約束された」

 ペテロも、女神の偉大さと主の寛大さを称えた。





18

 ペテロの母親である北関東のマリアも、主の母親である南関東のマリアから聞いて主の福音を知った。
しかし北関東のマリアは、主の言葉を直接聞いたわけではなかった。

 北関東のマリアは、女神の約束を知らなかった。
マリアたちは、主の聖痕が破裂した日である1月18日に、主が与えられた杖を女神に捧げた。
女神は、自らの約束が守られなかったことを深く悲しみ、空に帰られた。

 主は言われた。
「あの星を見なさい。女神は、空に帰られたのかもしれない」





19

 主のもとに、最初の精霊が現れた。
女はエバを名乗っていたが、主の目にはそれが精霊であるとすぐに分かった。

 エバは、主を試して言った。
「お前は、私が暮らすためのお菓子の家を建てることができるか」
主は、答えて言われた。
「貴女は、お菓子の家に暮らすべきお人ではない。お菓子の家は、建てるべきではない」
女神は、主が自らの心を知っていることを聞いて、嬉しく思われた。

 エバは、もう一度主を試して、言った。
「お前は、精霊たちの腹の中に入れるための赤ん坊を、どこに隠しているのか」
主は、答えて言われた。
「それは女神の名と同じである。人前で、妄りに口にして良いものではない」

 エバは、もう一度主を試した。
「それは、お菓子と何が違うのか」
主は、言われた。
「お菓子だと思えば、お菓子として扱っても良い。お菓子として売っても良い。
 しかし私はもう一度言う。貴女は、お菓子の家に暮らすべきお人ではない
女神は、主のこの言葉を聞いて、大いに喜ばれた。





20

 主が星を数えていると、再び精霊が現れた。
今度の精霊は男の姿をしており、バルトロマイといった。

 バルトロマイは、主を試して言った。
「お前は、私が徴税人たちから逃げる方法を知っているか」
主は答えた。「徴税人たちは、何と言って貴男を追いかけているのか」と。

 バルトロマイは答えた。
「私が盗みをしていたと言うのだ。私は夜の街を歩いていただけで、盗みはしていない」
その時、徴税人たちがバルトロマイに追いついた。

 主は、言われた。
「夜の星が見ていた。その人は盗みをしていない。私は夜の星を見ていた。間違いない」
 徴税人たちは、主を脅かすように言った。
「それならなぜ、今日の月は欠けているのだ。その人の心に影がなければ、月は欠けないでないか」

 主は、答えて言われた。
「その月を盗んだのは私だ。月の明かりを盗んで星を数えていた。
 しかし言っておくが、星の数は減っていない。その人は星を盗んでいない」


女神は、月を盗んだと言い張る主を祝福した。





21

 アララト山の頂で、オリーブの実をしぼっている者たちがいた。
「何をしているのだ」
「女神に捧げる、油を搾っているのです。主よ」
主が来られたことを歓迎した娘は、主の頭から搾りたての油を注いだ。

 主は、傍に立っているとうごまの木を見られた。
「このとうごまの木は、何故、枯れかかっているのか?」
 若い数学者は答えた。
「私たちが実を洗った水を捨てるから、とうごまの木が枯れたと徴税人たちは言うのです。
 私たちは、オリーブの実を洗うのを止めるべきでしょうか、主よ」

 主は答えた。
「とうごまの木は、女神の降臨が約束された時に薪とされるものだ。
オリーブの実を洗うのを止めてはならない。とうごまの木が枯れる前に、女神の降臨を願わん」


 主は、オリープの実を手にとって、バルトロマイにも同じものを渡し、水で洗い始めた。
「何をなさいます。お手が汚れるではありませんか」
主は、答えて言われた。
「私は女神から言われている。足は杖よりも尊い、手は汚れた布よりも清いと」





22

 エバは、自らの家で見たことを主に話した。
「私の父は、奇跡を起こしたのです。しかし、私の母はその奇跡を認めないのです」

 主は、言われた。
「それは、自らが入れたはずのない赤ん坊を、手に入れたことではないのか」
エバは、驚いて言った。
「その通りでございます。主よ。しかし私の母は、その奇跡を認めないのです」

 エバは、続けて言った。
「それで私の母は熱病にかかり、私は暮らすためのお菓子の家が必要なのです」
主は、言われた。
「貴女の父親が起こしたのは、奇跡ではない。貴女は、お菓子の家に逃げてはいけない」

 エバは、主に尋ねた。
「主は、自らが入れたはずのない赤ん坊を、手に入れる奇跡を起こされますか」
主は、答えて言われた。
「自らが入れたものを取り出し喜ぶのは愚か者のヨゼフである。しかし私は、奇跡も起こさない」

 エバは、喜んで言った。
「主よ。それを私に約束した、貴男は私にとって奇跡でございます。
 私を、主の奇跡を信じる者として認めてください」





23

 主は、女神が空に帰られたとの知らせを受けた。
アララト山の山頂では、主はバルトロマイとともに、今日もオリーブの実を搾っていた。
主が空に帰られたと知っては、なおさらのことである。

 主は、バルトロマイに命じて、とうごまの木の根本に、搾りたての油をこぼした。
数学者たちは、慌てて言った。「何をなさいます、主よ」
主は、もう一度聞かれた。
「このとうごまの木は、枯れかかっておるのだな」

「その通りです。主よ」
オリーブの実を洗う数学者たちは答えた。
 主は言われた。
「女神のため枯れるとうごまの木なら、根っこから引き抜いて女神に捧げなさい。
 徴税人たちは、自分たちの手を汚したくないから、洗うのを止めろと言うのである」


主はバルトロマイに命じ、とうごまの木を残らず薪にされ、農民たちに分け与えた。
数学者たちは口々に噂しあった。

「女神の降臨は近い」と。





24

 バルトロマイとともに汗を流される主を見た数学者たちは、噂をした。
「主は、バルトロマイの上に奇跡を起こされるのではないか」
主は、首をふって奇跡を否定した。

 主が、奇跡を起こされているという噂が立った。
エバは奇跡を起こしたという主につめより、どんな奇跡を起こしたのか主を問いつめた。
主は、言われた。
「私は奇跡など起こしてはいない。私は、女神に捧げるオリーブの実を作っていただけだ」

 バルトロマイは、主を責めるエバを怒った。
「我々の主は、夜の星を数える以外に、何の奇跡も起こしてはいない。お前は、お菓子の家に帰れ」

 この騒ぎを見ていた女神は、地上に降り立った。
主が、どのような奇跡を起こしたか見届けるためである。
女神は、地上に降り立ったとき、女数学者のなりをして、その国の人々の名を借りられた。

女数学者のなりをした女神は、こう名乗った。「私は、mimic のY、Y染色体のY子だ」と。





25

 女神が地上に舞い降りたとき、エバは絶望していた。
女神が「どうして絶望しているのか」エバに聞くと、エバは答えた。
「主の抱いているオリーブの実が、赤ん坊に見えたのです。主が奇跡を起こされたと思ったのです」

 女数学者のなりをした女神は、仰った。
「あなたの主は、精霊のお腹の中にお菓子を入れたのです。だからオリーブの実が実ったんです」
エバは、泣き止むと、言った。
「知っています。でも、貴女はなぜ私が、お菓子の家を欲しがっていることを知ったのですか?」

 女神は、答えて言われた。
「貴女の主に、貴女を助けるよう命じたのは、この私だからです」
エバは、女神の言うことが理解できなかった。
 女神は、続けて仰った。
「主は、貴女の罪を許されるでしょう。行きなさい!」

 エバは女神に問い返した。
「しかし私は、どこへ行けば良いのでしょう」
 女神は、優しくお答えになった。
「貴女は夜にお逃げなさい。バルトロマイを見間違えたのは、暗闇のせいだと自分に言い聞かせなさい」





26

 徴税人たちは、主の杖を女神に捧げた女を捜していた。

 徴税人たちは、夜に逃げようとしているエバの腕を掴んだ。
どこからか、主の声が聞こえた。
「放しなさい。その娘が星を数えに行くのを止めてはならない」

 徴税人たちは、言い返した。
「女神を欺いて、空をも欺いた者が、夜に逃げるのを黙って見ているわけにはいかない」
主の声も言い返した。「お前たちは、女神ともあろうお方が、その娘に騙されたというのか?」

「女神は空に帰られたのだ。この娘は取り調べるまで、放すわけにはいかない」
徴税人たちは、譲らなかった。

 主の声は、続いた。
「女神は、今、お前たちの近くにいらっしゃる。その目で確かめるが良い」
徴税人たちには、返す言葉もなかった。





27

 主の言葉を疑った徴税人たちは、
バルトロマイを捕まえてきて、女神を汚したと言いがかりをつけ、アララト山から追放した。

 これを悲しんだ主は、女神の言葉を待った。
女数学者の姿をしていた女神は、枯れかかったとうごまの木を指さした。
そして主は、かつて女神が落とされた稲妻が、畑を豊かにしたことを思い出した。

 主は、言われた。
「エバやバルトロマイは、私にとってのオリーブの実だ。とうごまは枯れるかも知れない。
 だから、女神の名の下に私は言う。罪を犯した者は全て話せ」


 1人の徴税人が進み出てきて言った。
「私は、1度の罪も犯さずに生きてきた。そのオリーブの実を渡せ」







28

 主が精霊たちに呼びかけると、アララト山の女神殿に大きな雷が落ちた。
とうごまの木は枯れたが、オリーブの実は無事だった。

 とうごまの木を日除けにしていた者たちは、主に不平を言った。
主は、女神の話をされたが、それ以上は何も言われなかった。
女神は、黒くこげたとうごまの木を見て、悲しまれたが、何も言われなかった。

 女数学者のなりをした女神は、主にお尋ねになった。「どうして、バルトロマイは怒ったのか」と。
主は、女神に答えた。「私が奇跡を起こせないから、エバに嫉妬したのです」
 女神は、「その奇跡とは何か」お尋ねになった。
主は答えた。「バルトロマイの腹の中へ入れることの出来ない赤ん坊を、私が取り出すことです」

 女神は、主の手を握りしめて、言った。
「貴男は、もう十分に奇跡を起こされました。エバは助かりました。行きなさい!」







29

 主は、女神が祝福された奇跡を、自分が起こしたものとは信じられなかった。
主は、女神に言われたよう円周率を 1000 桁口に含んで、女神に祈った。

 円周率を 1000 桁言えるようになった主は、徴税人たちから迫害された。
しるしを欲しがる人々は、赤染めの門に自らの名前をつけることに夢中になっていた。
「そのためには、円周率なんて3で十分だ」と、口々に徴税人たちは言った。

 女神のお言葉を信じた主は、祈った。
「もしも女数学者のなりをした貴女が、真の女神なら、『円周率は3でない』ことを示されるべきだ」
主の祈りは、再び奇跡を呼んだ。

 主が、その赤染めの門に到着されたとき、女数学者のなりをした女神が再び降臨された。
主は、女神の偉大さに心を打たれた。
そして、赤染めの門の6番目には確かに、「円周率は3でない」ことが書かれていたからである。

 主は、女神に問うて言われた。
「そのためには私は、祝福の鐘を鳴らさねばなりません」

「赤染めの門の向こうに精霊がいます。きっと、貴男を導いてくれるでしょう」女神は言われた。