爆薬の美学

−化学的マインスイーパ 



 マス目を追うのが苦手な視覚障害者が、
理論武装をすることでマインスイーパに挑んだ体験談です。








 マインスイーパは、量子化学における軌道の考え方を使うとすっきりする。
ここでは、地雷軌道:あるマインスイーパの解で、連続変形可能な領域と、定義する。



これを、1-s 軌道と呼ぶことにする。


 最初の数字は、マスに書いてある数字の合計を表す。
s の意味は、量子化学ではお馴染みであるが、深い意味はない。

s 軌道:想定しうる解の中で、もっとも地雷数の少ない軌道。

 地雷数が増えるごとに、p 軌道、d 軌道、f 軌道と呼ぶ。
なお、本来の意味は、sharp、principal、diffuse、fundamentalの頭文字という。

 つまり、

    

左図の解軌道を考えると、マスの数の合計が2であり、
地雷最小数=1となる位置を示す中図が2-s 軌道、2個となる右図が2-p 軌道である。



 また、



のような場合は、縮退した1-s 軌道と表現することにする。



 具体的に計算をしてみる。

  =   + 

重ね合わせの原理が適用できないか考えてみる。

 中図において、実際の地雷は2-s か2-p か、一方の軌道上に存在する。
そして、実際に地雷が存在する軌道が、右図の縮退した1-s 軌道と干渉を起こす。

 ところが縮退した1-s 軌道は2-p 軌道に含まれ、2-s 軌道とは干渉を起こさない。
つまりこの場合は、1つの地雷を含む2-s 軌道と、縮退した1-s 軌道が共存することになる。

 2-p 軌道は事実上、2つの1-s 軌道に分裂している。
なお、p 軌道以降は2つ以上の部分に分裂している点も量子化学の通りである。

  or  

図にするとこうなる。

 左図の1-s 2-p 混成軌道は、縮退2-s 軌道と縮退1-s 軌道の和で、9通りの配置が可能である。
右図の1-s 2-s 混成軌道は、2-p 軌道と縮退1-s 軌道の和で、12通りの配置が可能である。

 このように地雷の存在確率の計算に役立つ。
さらに、特にこの場合にはちょうど興味深い結果を与えている。

  他には  

上記赤線の領域は、どこも1/7の確率で地雷が存在することが分かる。



 地雷配置密度の確率的な起こりやすさをエネルギー準位と呼び、
あるマスに地雷が配置されている確率を危険エネルギー準位と呼ぶことにする。

 より正確には、確率の対数をとったものとして定義し、計算の便を図る。


 すると、「軌道の半数に地雷が配置された状態がエネルギー的に安定」する。
これは、フント則を意味すると思われる。

 上の左図で赤線の引いていない3マスに注目する。
この3マスには、地雷数が1であれ2であれ、エネルギー準位は等しいのである。

 つまり、1-s 2-p 混成軌道と、1-s 2-s 混成軌道が等しいエネルギー準位なのである。
エネルギー準位が等しい2つの軌道の共鳴状態なのだから、それ自身混成軌道とみなせる。

 と、このような理屈で赤線の領域のエネルギー準位はlog(1/7)で等しくなる。
右図の5マス領域についても、同じ理屈が使え、赤線の領域は混成軌道とみなせるだろう。



 ちなみに、ぼくは旗を立てずに遊ぶ。

 初級のハイスコアには、もともと低いエネルギー準位が要求される。
つまり、あらかじめ地雷配置に偏りがあった方が、有利である。

 まあしかし、初級を5秒でクリアするのはわりと高確率である。


上級に関しては危険エネルギー準位の方が重要になる。






  本日のハイスコア






東京大学理学部数学科
岡澤代祐
sanshiro@sastik.com