おーい 竜馬


 何だか、懐かしさに全巻集めたが、

小脳出血前の記憶に引きずられて、全巻集めたに一票。




□1 おーい 竜馬


 中学2年時に全巻揃えて、
玲奈ちゃんの恩に報いるという目標もあったぼくは、理想の人物としていた

 放送開始から、5年である。
放送時は、13話までの、竜馬の少年時代を観ただけで、さらに半分ほど見逃した。

 「よく覚えていたな」である。
本屋には、最初から「おーい 竜馬」目当てに下調べもせずに、走って行った。





 ぼくの記憶が正しければ、
5年4組の頃、「おーい 竜馬」のビデオを貸してくれたのは、真理奈ちゃん



 女の子たちが、騒ぎながら岡澤−ダイコン−の下に走り寄る。

美穂 「ダイコン。ヘプ、ヘプ、ヘプ・・・」
岡澤 「何?」
真理 「美穂子、ヘップバーン」
美穂 「そうそう、『ヘップバーン』って知ってる?」
岡澤 「え、どっかで聞いたことある。ちょっと待って」
女子 「?」
岡澤 「もしかして、『オードリー=ヘップバーン』のこと?」
美穂 「何で知っているの?」
真理 「そうそう、『オードリー=ヘップバーン』」
岡澤 「映画の、女優だよね」
真理 「そう。『ローマの休日』とか」
岡澤 「『ローマの休日』も聞いたことある。ヘップバーンだったんだ」
真理 「女子もほとんど知らないのに、男子は全滅かと思った」
美穂 「何で知っていたの?」
岡澤 「昔、テレビで。『西田ひかるの痛快人間伝』って知ってる?」
真理 「同じ、同じ、同じ、同じ」
岡澤 「ああ、安心した」
真理 「ダイコン、あの頃、テレビなんか見ていたの?」
岡澤 「NHKなら、少し。あと『おーい 竜馬』も好きだった」
真理 「あれ、私のお母さんも好きだった。全部見た?」
岡澤 「真澄の世話で大変で、最初の方しか見ていない」
真理 「残っているかもしれない、貸してあげようか?」

 という話だったと思う。
この会話の、「あの頃」で通じる部分が、実は深いのだ













□2 鉛筆を用意する暇もない


 小学1年生の頃は、良く覚えていないが、
2年生の頃は、毎日のように隣の女の子に鉛筆を借りていた記憶がある

 隣の女の子の方も、驚くわけで、
「鉛筆貸して」と言う度に、変な顔をされるのは苦痛だったが、仕方がないこと。

 2年1組の小島先生も、手を焼いて、
席替えで、クラス1しっかり者の、真理奈ちゃんをぼくの隣にしたわけである。



 クラス1の美人が隣の席に来た。
「鉛筆貸して」と言うのにも、照れやら恥じらいが出てくる小学2年生

 だけど、小島先生の判断は正しく、
彼女はいつも、変な顔をせず、笑顔で鉛筆を貸してくれたのが有り難かった。

 3年と4年は別のクラスだったが、
1年1組と2年1組、5年4組と6年4組で、ぼくと真理奈ちゃんとは一緒だった。



 まあ、真理奈ちゃんの家では、
「隣の席のダメ男君」扱いだったとしても、仕方がない生活態度である

 公園で、真理奈ちゃん達と会ったとき、
母が、ぼくについて真理奈ちゃん達に聞くと、驚く言葉が返ってきたという。

 「女の子たちに責められて、すぐ泣く」
7歳のぼくは、家でこの話を聞いて、正直少し傷ついたんじゃないかと思う。













□3 名誉挽回を計画


 そんな折に、授業参観があった。
発作のため春は欠席した母が、秋の授業参観には3歳前の妹を連れてやってきた。

 案の定、妹は大騒ぎしている。
真理奈ちゃんに、本当の自分を見てもらいたいのだが、さすがに勇気が出ない



 そして、ついに転んで泣き出す妹。
ぼくは、泣き止んで再び走り寄ってきた妹を膝に乗せ、授業に参加した

 母の制止に、正論で言い返して、
しかし、ぼくは鉛筆が足りず、保護者監視の下で真理奈ちゃんから妹用に借りる。

 そして、10分ほどが無事に経過し、
連れ戻される妹に鉛筆を持たせて、真理奈ちゃんに「ありがとう」を言わせる。



 名誉挽回は、大成功である。
鉛筆を持っていなかったことが、むしろイイ感じのスパイスになっていた

 5年4組の頃の話だったかな、
「あんな小さい子に、『ありがとう』を言われたのは初めてだった」という後日談。

 そりゃまあ、そうだろう。
兄の方も、そこまで考えて、わざと妹に『ありがとう』を言わせているのだから。













□4 その後の父母会


 鉛筆を持っていなかったぼく。
毎日のように鉛筆を借りていたことは、真理奈ちゃん・母は承知だった様子

 うちの母が、鉛筆を借りた話をして、
「いつも鉛筆を借りて」と言ったら、真理奈ちゃん・母は否定しなかったそうだから。

 もちろん、帰って母に怒られた。
だが、「母の介護が大変で学校の支度もできない」とは、小学2年生は反論できない。




 だが、保護者の反応はそうでなく、
学校の支度をしないことよりも、母の介護と妹の世話の方に軍配が上がる

 その一方で、算数の計算はクラス1。
九九の25マス計算で、30秒を切っているのはぼく1人で、2位に10秒の差をつけた。

 不思議に思って、調べたところ、
真理奈ちゃん・母は、ぼくが公文式優秀児と知ることになり、再び大評判になった。



 ぼくの噂話は、いずれ沈静化したが、
真理奈ちゃん・母発のぼくの噂話が、ますますエスカレートしたと話に聞いた

 確か、M美ちゃん・母から聞いた。
母は赤面するし、父は苦笑するし、ぼく自身は、あまり悪い気はしていなかったが。



 ここで、漫画作品と話が繋がる。
噂話がエスカレートした時期を考えると、どっかでシンクロしたらしい