亜友ちゃんのリボン −モノクロ−


岡澤 「『岡澤は、岡○以下!』だってさ・・・」

岡○ 「こっちは、『岡○は、岡澤以下!』だって・・・」




□1 クラス編成に 偶然はない


 井手部でも、岡・岡コンビとか呼ばれて、
趣味も行動パターンも違うのに、何でこの2人は仲良いのかなあ?

 唯一、共通の話題があったんだよ。
岡澤と岡○の共通の話題・・・・・・「亜友の悪口」


 中2−Cの授業中に、亜友が後ろを向くと、岡澤が座っていて、

 中3−Cの授業中に、亜友が後ろを向くと、岡○が座っていた。


 だから、半ば必然的に「岡」が選ばれて、
しかも毎年、あまり授業を真面目に聞いていない奴を選んだわけだ

 つまり、教師の側も小林大地のように、
「学校をサボって旅行に行く」くらいのダメンズ系の男を選んだのだと。

 それで、後ろに座っている側にしても、
「真面目に授業を聞くよりかは、この女の子と遊んでいる方がましかな」と。



 岡澤と亜友が、中2の最後まで仲が良かったのは、
岡澤が数学の授業を聞かない本当の理由が、亜友の両親にバレたから


 岡澤 「最近、数学の授業中も後ろを向かないねえ」
 亜友 「うちのお母さんが、アンタみたいのと仲良くするのは止めなさいって」

 岡澤 「・・・・・・。お父さんは、何て言っているの?」
 亜友 「『そいつ、意外に頭が良いんじゃないか』って言ってる」
 岡澤 「・・・・・・。」


 それで亜友が、岡澤の中間試験の答案を取り上げると、
クラスに2人しかいない満点答案の1人で、亜友のお母さんも大喜びだったと







□2 王様の 判断根拠


 数学の授業中に、少女漫画の付録を没収された亜友。
当然、お母さんに叱られて、その話はお父さんの耳にも入るというわけだ


 父親 「どうして、そんなことをしたんだい?」
 亜友 「岡澤の方が先に、私のことを魔法使いじゃないかって言ったの」

 母親 「だから、そんな男の子と遊ぶのは止めなさいって、言ったのに!

 父親 「どうして、そんな話になったんだい?」
 亜友 「私がね、魔法のリボンで変身して、この学校に入学したんじゃないかって!

 父親 「・・・・・・。」
 亜友 「だから岡澤もね、『姫ちゃんのリボン』が好きだったんだよ、きっと」

 父親 「そいつ、意外に頭が良いんじゃないか?
 母親 「止めて下さい。その子も、亜友と同じ漫画が大好きだっただけですよ!」



 「男は黙ってサッポロビール」で合格する会社もあれば、
「娘さんは、もしかして魔法使いじゃありませんか?」で、採用してくれる社長もいる。







□3 岡澤&亜友 小学校の同級生説


 4期生の小学同窓生は、3組知るが、
学園まで歩いても通える2人はそれとして、残る2組は意外な感じだろう。

 というのも、考えてみれば当然で、
中学受験に備えながら、小学校時代の人間関係を大切にするのは難しい

 そういう意味では、ブラックオクトウバーの、
「亜友が岡澤を追いかけて、公文国際学園受験」という話は、信じてみたくなる。



 だが、岡澤は小学5年で小脳出血で、
志望校の変更を余儀なくされただろうなというのは、容易に想像がつく

 すると、岡澤の公文入学は運命の悪戯。
亜友には岡澤に合わせるほど、公文学園入学に余裕があったとは考えにくい。

 さらに、致命的な問題点としては、
この2人が最初から知り合いならば、中学1年で同じクラスにされたはず







□4 聞こえはよいが・・・


 4期の同級生たちは、岡澤を見て、
「小学5年の時に病気で身体障碍者になってから、数学ばかりしている」と


 なら、次の疑問にどう答える?

「それほど重い身体障碍なら、どうして学園に入学できたの?」

「障碍の程度を見る限りだと、数学ばかりしている理由は別じゃないの?」

まるで、弁護士の反対尋問のようだが。


 回答は、次の通り。
「書類上は重い障碍だが学園には入学できた。亜友と同じ理由で」

「数学ばかりしている理由は、身体障碍と『直接は』関係ない」



 実は、この回答は1つにまとめることができて、
「石曾根校長に期待されていたから」

 つまり、石曾根校長が、
「身体障碍に負けじと、数学を頑張って欲しい」と言っているのである。


 この噂話は、別に「ちょっとイイ話」ではなく、
「クラスでは友達も少なく、何を考えているか分からない岡澤」の話

「身体障碍って、俺たちには分からない問題もあるんだろうな」
"There is something about OKAZAWA. But we cannot imagine what it is."

キャメロン=ディアス主演 「岡澤に首ったけ。俺たちには理解できねえよ」
−そこまで意訳しろとは言っていない







□5 亜友ちゃんのリボン


 石曾根校長のはからいで、入学した岡澤と亜友。
その岡澤と亜友の席が前後したということは、単純に石曾根校長のはからい

 中学2年の、いつ頃に聞いた話か忘れたが、
最初から亜友は石曾根校長に、「困ったときは後ろの席の男の子に相談しなさい」と。

 ええと、これが校長権力なのである。





 学校案内には書いていないが、
石曾根校長は、障碍児教育に理解ある校長として、神奈川県内では有名なのだ

 県内の中学受験業界では有名だったが、
ネット上の噂話程度の感覚で流れている話であり、公表されている類のものではない。

 一般の保護者は、こんな噂に興味なく、
「変身の秘密」ではないが、4期生では岡澤と亜友だけが知っている入学の秘密である。



 ただ、根本の問題に触れると、
岡澤と亜友の関係は、石曾根校長が設定した「お見合い」が、上手くいっただけ

 だが、校長は玲奈ちゃんを知っており、
中学3年以降は、岡澤に無理を言えなかったという事実も、付記しておく。








□6 something の正体


「身体障碍って、俺たちには分からない問題もあるんだろうな」
"There is something about OKAZAWA. But we cannot imagine what it is."


 この something が何であるかについては、

多数説 岡澤のひねくれた性格
少数説 単に数学が好き

有力説 将来の夢に向けたひたむきな態度


 という論争が決着したのは、10年後で、

羽生説 身体障碍者時代に必死に介護してくれた恋人の応援



 −終了−