□1 究極の珈琲
2010年、ぼくは思い違いをしていたかもしれない。
珈琲を淹れるためのポットは、注ぎ口が狭い。
「水流を細くすることで、湯の温度を下げるためだ」などと説明される。
水出し珈琲は旨い。それは認める。
だが、2011年、低温抽出の旨さを否定する実験結果が出たのである。
−理論的には、コロンブスの卵だが−
今までのドリップ式の淹れ方で、ぼくの舌だと、
フルシティ・ローストの、モカ・マタリの抽出適温は、80度台後半。
温度は、7年前に計った記憶で正確でないが、
80度台前半まで下げてしまうと、酸味が強すぎるという印象があった。
正確には、フルシティではなく、南蛮屋ロースト。
だが、現在の方法で、同じ豆を淹れると、
同じ温度だと酸味が強すぎるので、少し高い温度を心がけている。
誰が言い出したか知らない話があった。
「注ぎ口が太いから、湯の温度を下げるため、ポットを高くして注ぎます」
その時は納得したが、事実は逆だったのである。
理論的には、単純なことである。
珈琲抽出で重要なのは、熱エネルギーよりも水流の運動エネルギー。
新しい方法は、ドリッパーを左手で持った。
ポットの注ぎ口を固定して、ドリッパーの方を回転させて静かに注ぐ。
改良の余地はあるが、旨さが違う。
だが、熱の仕事等量を考えて、水流が全て熱に変化しても温度が足りない。
珈琲豆から旨味成分を取り出すのも、「仕事」なのである。
しかし、熱を全て仕事に変えることはできないという、熱力学の第二法則である。
では、なぜ飲料メーカーは「低温抽出」を主張するか。
やってみれば分かるが、「静かにお湯を注ぐ」ことは、難しいのである。
容器の底から出る湯では、水圧が高すぎる。
「ゆっくり」とポットを傾けながら表面のお湯を注がなくてはならないのだ。
機械化する方法はあるものの、
「ゆっくり注ぐ」代償として、場所が必要なのと、容器にカビが生えるリスクが。
すると、飲料メーカーの暗黙の諒解として、
「低温抽出したコーヒーが最も旨い。ただし、大量生産可能な淹れ方のうちで」
これは、コーヒー・ランナウェイ仮説である。
正しい根拠はなくても、需給が釣り合い「モテ」た珈琲が、科学的根拠を主張する。
それで、最新の結論では、
コーヒーは品種ごとに特徴的な香り物質を持ち、それを抽出できる温度が最適。
植物は、化学調味料の合成ではないのだから、
コーヒー豆の品種の違いは、「配合割合が違います」ではなく、本質的に何か違うわけだ。
焙煎も、その香り物質中心主義が良い。
だが飲料メーカーとしては、そんな差別的な匂いの広告戦略をしたら企業イメージを落とす。
というわけで、抽出理論は、
運動エネルギーが豆の表面を削り取り、熱エネルギーが豆の内部をえぐり取る。
究極の珈琲といえば、
アート・コーヒー銀座四丁目店に八木さんがいた頃の、あのモカ。
サイフォン式で淹れるが、
初めて飲んだ時には、「実はワインだろ?」の疑いが、最後まで抜けない。
あれは、八木さんだから。
そして、名前は忘れたが、
「○○ 銀座インズ店」だか、英国王室御用達ブルー・マウンテン。
実は、ぼくの好みとズレた。
美味しさと究極感は分かったが、「何だか少し違う」という印象だった。
引き合いに出して済まないが、
ver.2010.1.18. (1作目)は、この英国王室御用達の味と近い気がした。
□2 被災地ブレンド
被災地で珈琲は贅沢品かもしれないが、
南蛮屋なら、タジン鍋を使えば海水で珈琲が入れられるんじゃない?
海水を使う分には、誰も文句言わないだろう。
1 タジン鍋の中に、カップとドリッパーを置く。
2 鍋の底面を海水で満たして火にかける。
3 湯気が天頂から水滴となって、珈琲を淹れる。
味は保証しない。
だが、警察と追いかけっこしながら、カプセルホテルで淹れる珈琲より・・・
2010年の逃避行中、
豆とミルは持ち歩いていたから、母島の手荷物検査で驚きの展開に・・・
教訓 : 珈琲豆とミルを常備して逃走する殺人犯はいなかった。
すると、経験上、
被災地でのんびり珈琲をたてている20代独身男性に、女が集まる。
公文国際学園、社会福祉委員長。
□3 アイスコーヒー
Bar では有名な豆知識だが、
単純に、ヒトの味覚が心地よく感じる温度帯は、体温±30〜35℃の2箇所。
飲み物にホットとコールドがあるのは、
正の絶対値を持つ実数には正と負の2通りがあるという、数学的理由に過ぎない。
すると、中間温度にはあまり意味がなく、
「究極のホットコーヒーを冷ませば究極のアイスコーヒー」とは、限らない。
1 揮発性の香り成分に関しては、温度によって絶対に異なる。
2 油状成分に関しては、冷やせば固まる可能性がある。
最近の「ホットでもアイスでも美味しい」のは、別に誇大広告ではなく、
1 水や湯を注いで10秒で飲める飲料なら、揮発成分は問題にならない。
2 食品添加物を使えば、油状成分を冷やしても固まらない。
だけである。
「究極の珈琲」研究が挫折しつつある理由で、
いくら究極の味でも、珈琲に食品添加物を使うのはどうだろうという疑念から。
近代オリンピックへの批判ではないが、
ルールが細分化されてしまうと、「究極」を制覇した達成感が減るというか・・・・・・
むしろ心配なのはドーピングで、
本気で追求した結果、「遺伝子組み換えのコカイン入り珈琲」が究極と言われても困る。
□4 缶コーヒー
珈琲の淹れ方を、いくつ思いつくだろうか。
この国の珈琲の淹れ方は、資本主義に毒されている感が否めない。
ぼくが、現在研究中の「究極の珈琲」は、
原材料費以外、いっさいの費用がかからない方法としても、究極である。
という前置きで、缶コーヒーの偉大さに気付く。
密閉した液体コーヒーを1ヶ月放置したら、黄色いカビが生えている。
冬でも、1ヶ月放置すれば当然の話なのだが、
「オクラトキシン」を生産する系統の、黄色カビなのではないかと考えている。
世界最初の瓶詰めは、ナポレオンが作らせた。
「戦争のための保存食」を考案しろと、賞金を出してアイディアを集めた。
なぜ、食品添加物が歓迎されるかというと、
「何を食べさせるか」より、「どのタイミングで食べさせるか」追求の結果。
つまり、食品産業の悪徳商法化であって、
クーリング・オフの期間を短く、消費者に消費させてしまえば販売主のもんだと。
すると自動的に、ダイエット産業も儲かる。
即席食品は、消費者の作る手間を省いているのではなく、考える時間を奪っている。
文科省の「考える力」の育成。
まずは朝食を作ることで考える時間を確保しろと言ったら、外食産業が・・・
「美味しんぼ」の、「酒屋で立ち飲み、ツマミは缶詰め」
酒飲みの場合は、飲んで後悔するのが身上なんだから、保存食品で良いのだ。
ああ、すると究極の災害対策は、
家には必ず保存食品を置いておき、古いものから酒盛りに使って翌朝後悔しろ。
□5 豆の研究
まず、どういうことなのかというと、
現代日本の珈琲は、農水省や厚労省指定の方法で飲めということだ。
指定の方法で飲めば、安全は確かだが、
想定外の方法で淹れた珈琲は、安全性が保証されているとは言い難いのだ。
具体的に、何があったのかというと、
ぼくの実験で、見事に麻酔性のある物質が抽出されてしまったのだ。
これは、水出し珈琲特有の事情であり、
高温で抽出した珈琲の場合は、この物質は一瞬で蒸発してしまうだろう。
しかも、珈琲中に含まれていたのでなく、
低温抽出中の珈琲から、立ち上ってくる香り成分の中に含まれていたのだ。
そういえば、どこかで聞いたことがある。
昔は、珈琲の香りを鼻で味わうための道具や、専門の喫茶店があったと。
これは、大麻の鼻孔吸引と同じである。
細かいことは忘れたが、今ではそんな喫茶店、海外でも聞いたことがない。
すると、単純な結論に思い至るのである。
この麻酔性のある物質は、残留農薬由来の成分なのではないのだろうかと。
要するに、珈琲が農薬を浪費し始めて、
珈琲の香りで気分を悪くする客が増え、スニフ喫茶は廃止になったとか。
□6 ブレンド
理屈としては、簡単に思いつくのだ。
農薬を使えば使うほど、珈琲は美味しくなる可能性が高いのだから。
昔は、珈琲はブレンドして飲まれた。
現代のストレート珈琲の味の向上は、農薬に由来すると考えた方が良い。
残留農薬が多いと、なぜ美味しいか。
それは、残留農薬という有機溶媒が、珈琲の成分を引き出すからだろう。
この物質の発癌性は、疑わしい。
クロロエタンや、クロロエチレン系の物質だろうが、同定していない。
「発癌性不明」と、されている物質。
だって、「発癌性あり」などと公表されたら、先物市場が大打撃のはずだ。
珈琲は、石油に次ぐ先物市場の華。
都合の悪い科学的事実は、法律の改正によって対応しているはずである。
1980年代に、珈琲発癌性説が浮上。
日米の政府は、飲み方に法的規制を加えることで、問題に対応する。
ぼくの研究により、判明している。
珈琲フィルターには、この残留農薬成分を取り除く働きがあるようである。
ということは、我らが資本主義は、
愚かな大衆には、知らせなくても良い真実は何も知らせてくれないわけだ。
ストレート珈琲の味は、向上した。
単なる品種改良で味が良くなるのなら、もっと長い歴史があるはずだ。
と、そういう理由が存在するため、
標準の方法以外で珈琲を淹れる際には、有機無農薬珈琲を使用している。
すると偶然に、面白い発見をした。
珈琲フィルターとして市販されている以外の布で淹れた珈琲が、最高に旨い。
無印良品で売っていた「ふきん」なのだが、
新品のこの布を使って淹れた珈琲は、何か信じられないくらいに旨い味がした。
たぶん、「ふきん」は珈琲の全成分を透過させる。
市販品のフィルターが、何かの成分を濾し取っている補強証拠にも思えてきた。
旅先で、「ふきん」を代用品として使用して発見。
□7 珈琲ウォッカ
ポーランド産の、スピリタス96°
この世界で最も強い酒で珈琲を淹れると、意外な真実を知ることになる。
珈琲に、ほとんど色が付かない。
豆が脱色されるどころか、ウォッカがやや黄色くなる程度で、黒くはならない。
なら、味はどうなのかというと、
透き通るような苦み=カフェインの味だけが、舌に染みこんでゆくような感じ。
漬けておいた豆を、取り出し乾燥。
その乾燥した豆で珈琲を淹れると、カフェインレス・コーヒーの味がする。
確かに、カフェインが溶けたのだ。
しかも、カフェイン以外の成分は、ほとんどアルコールに溶けない様子である。
他にも、面白い現象が観察される。
この黄色いカフェイン・ウォッカに、水を少し入れると、瞬時に白濁する。
コロイド粒子の凝析に似た現象だ。
そのため、このウォッカを他の瓶に移すときは、瓶を共洗いしておく必要がある。
しかも、それだけではなかった。
このカフェイン・ウォッカを、冷蔵庫に保存しておくと、白い沈殿が徐々に大きくなる。
おそらく、白濁の原因物質である。
溶解度の問題かと思って、瓶を冷凍庫に入れると、確かに白濁し沈殿が形成。
この物質は、カフェインかと思ったが、
濾過してみると油状成分のようで、湯に溶かすと甘酒のような風味で、苦みはない。
集めてアルコールを拭うと、バター状の塊。
甘い、珈琲クリームのような感じで美味しかったが、気温10℃過ぎで液体になった。
Bar にも、珈琲ウォッカなどはある。
あの味の良さは、実はアルコールとは無関係だと結論せざるを得ないのだ。
だって、カフェイン以外の味もする。
挽いた豆をスピリタスに漬けておいても、カフェイン以外の成分は溶けにくかった。
すると、珈琲ウォッカの強みとは、
アルコール濃度が高いから、長時間かけて抽出しても、容器にカビが生えないだけ?
そんな研究から1年半の2011年9月。
土屋守氏の著書で、樽出しウィスキーでも似たような現象が紹介されている。
「クイズ スコッチ・ウィスキーと、コーヒー豆の共通成分は何か?」
ピンポン 「樽由来のタンニン!」
というわけで大本命は、没食子酸エチル。
そんな物質が実際に存在するのか調べてみると、没食子酸プロピルは有名らしい。
しかも、抗酸化剤としてバターに添加という。
だが、エステルのくせに加水分解どころか、加水したら逆に量が増えたはず。
仮説 エタノール中では水和物として安定
□8 琥珀色
小海線で、南蛮屋の甘酒を飲んでいて、
熱や光で茶色く変色するのは、味噌や醤油と同じだから問題ないとあった。
「熱や光で茶色く変色する」から考えて、
要するに味噌や醤油の色は、「メイラード反応」の生成物ということが分かる。
別の場所に挙げた「料理のわざを科学する」で、
ステーキの香ばしさは、糖とタンパク質のメイラード反応の生成物と書いてあった。
そう言えば、似た現象は他でも見た。
生化学の本か美容整形の本の両方か何かで、「プロテオグリカン」を読んだ。
ヒアルロン酸や、コンドロイチン硫酸。
美容整形と、甘酒の変色を同じ理屈の射程距離で説明してしまう科学に乾杯。
念のために書くと、プロテオグリカン、
「プロテイン(タンパク質)化したグルコース(ブドウ糖)」あたりの言葉と思う。
ということは、皮膚の「くすみ」とは、
皮膚も甘酒と同じ、熱や光で茶色く変色する成分を含んでいますよという話?
つまり、甘酒の注意書きには、
「熱や光で茶色く変色するのは、貴女の肌のくすみと同じで問題ありません」と。
いや、私の肌の方は大きな問題よ、
そんなことありません、それも甘酒と同じ問題で、賞味期限が過ぎているだけです。
毎度、バカバカしいお話を申し上げました。
東大を卒業したなら、南蛮屋の甘酒をネタに、即興落語くらい出来なきゃ・・・
さて、このバカバカしい話から推測、
珈琲の琥珀色は、単純に炭の色ではなく、メイラード反応の生成物の色?
そうすると、水出し珈琲の味が分かる。
熱湯で淹れると、中間生成物が反応しきってしまい、単純な味の珈琲になる。
そして、フレンチ・ローストにすると、
やはり中間生成物が反応しきって、苦みだけの珈琲になってしまうわけだ。
逆に、ライトやシナモン・ローストは、
メイラード反応もどきが十分に起きず、カフェインの味だけは強いだろうが。
Cafe de l'ambre の由来を考えると、
先の白濁成分が、カップに混入しないような入れ方が、理想的なのか。
反応させきるという方法もあれば、
豆の中から溶け出して勝手な反応をしないように、閉じこめる方法もある。
Art Coffee に、八木さんがいた頃の話。
「温度変化で、7色の味が楽しめます」と書いてあったのは、この理由か?
油状成分が、分離したりくっついたり、
まあ「砂糖を入れすぎた場合は、取り替えますので遠慮なく」は、驚いたが。
□9 二酸化炭素
また、興味深い現象が観察された。
珈琲の色の濃さと、豆から発生した二酸化炭素の量が比例するように見えた。
なかなか、信憑性のある結果だ。
焙煎したての珈琲が美味しいのは、単に二酸化炭素が盛んに出ているからじゃないか。
つまり、伝統的な珈琲の味とは、
二酸化炭素を触媒にして、湯に珈琲豆の成分を溶かしたものという結論が出てくる。
すると、残留農薬の理論も成立。
淹れる際の触媒が、焙煎由来の二酸化炭素から、農薬由来の有機物に交代した。
なるほど、単純な理屈である。
何が市場に歓迎されたかと言うと、この方法だと美味しく淹れるのに技術を必要としない。
なお、補強する証拠としては、
二酸化炭素が溶けるとは聞いたことのない、スピリタス96°には、色が付かなかった。
これも、無農薬豆での話だ。
トンデモ理論を見つけたが、
「珈琲豆が生きている」というのは比喩であり、二酸化炭素は生命活動とは関係ない。
これは、焙煎による生成物で、
それを植物ホルモンの「エチレン」と同列に扱うのは、おそらく何かの勘違いである。
珈琲の実は、エチレンを生成するか。
仮にそうだとすると、上記のハロゲン化有機物の生成は、科学的に簡単に説明できる。
珈琲豆は、アカネ科の植物の種子。
種子の周囲のコーヒー・チェリーの成熟には、エチレンが使われていても不思議はない。
□10 水出し珈琲
ウォータードリッパーを、自作した。
単純に、氷を融かせば自然に水を滴下してくれるので、複雑な装置が必要ない。
すると、誰にでも作れそうなのだが、
農水省や厚労省公認の方法ではないから、気をつけないと安全性が保証されない。
この器具で、フィルターの意味に気付く。
「余計な成分を濾し取って」という宣伝文句は、実は発癌成分の除去じゃないかと。
要するに、「ものは言いよう」である。
「使わないと危ないかも」とは言わずに、「使えば美味しい珈琲」と言い換える。
それを、「良心的な価格」で販売とは、
押しつけがましい良心にも程があるという感じで、何だか釈然としないのであるが。
究極の方法は、現在も研究中。
念のため断っておくと、実際のところ2010年は、珈琲の研究どころではなかった。
ま、小笠原で珈琲農場を見学したくらいかな?
□11 料理の裏ワザを科学する
最近、昼のワイドショーでも平気に、
「今日は、簡単に○○できる裏ワザを紹介します」と平然と言ってのける時代。
家庭科の教科書にはない、便利な方法。
「異端を崇拝する料理法」とまでは言わないにしても、主婦は何も感じませんか?
岡澤は、これを見破るのに成功した。
とろみを付ける裏ワザ → 乳化剤を入れる。
口当たりを良くする裏ワザ → 増粘多糖類を入れる。
柔らかく仕上げる裏ワザ → ゲル化剤を入れる。
つまり、スポンサーの食品会社にお願いして、
即席食品工場で、低コストで楽に料理をする方法を、教えてもらっただけだ。
食品添加物を使えば、もっと低コストで仕上がるが、
家庭で調理できるように、代用品となる天然の食材を紹介しているわけである。
これは、食品会社の方にも「旨味」はあって、
自分たちの工場の味が、日本の食卓に広がるのだから、喜んで提供するのだ。
ゲストは、「美味しい」と言って、それを食べる。
そりゃ、スポンサーから提供されたレシピを「今ひとつ」と言ったら、干される。
シティ・ハンターの言葉を思い出す。
「テレビ局のプロデューサーなんて、カタギの仕事のうちに入らねえよ!」
これに気付かなかった主婦は、家庭科の単位剥奪。
ぼくは、珈琲豆の異変にも気付いた。
だが、それは25歳という若さのせい、60歳も過ぎたら鈍くて気付かないだろう。
自分だけが良いアイディアと思い込み、
主婦仲間にテレビの受け売りを教えてあげたり、独自の方法を触れ回ったりする人たち。
技術とは、100年続いてこそのもの。
100年続く技術は、滅多なことでは編み出せないし、本人が生きている間に確認できない。
最近、安っぽい技術が横行しているのは、
本人だけが「100年続く」と思いこんでいた方が、おだてる側に旨味があるからだ。
という理由で、例の水出し珈琲製法は放置してある。
□12 嫁のメシがまずい
つまるところ、伝統的なレシピと違って、
テレビで流れている、食品工場直送のレシピは、代用品を使ってはならないのである。
そもそもが、食品添加物の代用品なのだから、
味が似ていても植物学的な分類が違えば、食品添加物として意味をなさないことが多いと。
もっとも、塩だって単なる塩味料ではなく、
沸点上昇の他、(確か)タンパク質の凝固促進とか、(確か)グルテンの生成を早めたりする。
作っている妻も、自覚はある気もするが、
テレビの司会者や芸能人の言葉を疑えずに、自分の舌が信じられなくなっているのだ。
尊敬する人たちが、「美味しい」と言っている以上、
これを「不味い」と言って、「テレビに出られない庶民のひがみ」と思われたくないのだろう。
フランシス=ベーコン、だっけ?
劇場のイドラに泣く既婚男性の苦しみを、400年近く前に予言したイギリスの哲学者は。
仕事を家庭に持ち込んではいけない教訓。知識のない子どもが真似すると危ない。
だが世の既婚男性に厳しいことを言うと、
料理のレシピに翻弄されているようじゃ、奥さんがマルチ商法に騙された時に困るよ。
せめて「出典」を確認しておくこと。
完璧にオリジナルでレシピを作れるほど、人間の想像力は豊かじゃないよ。
カレーに太田胃散は気付かなかったが、
お茶の水の「エチオピア」の壁には、スパイスの効能が太田胃散のごとく書いてあったっけ。
奥さんが明治大学出身とかで、
御茶ノ水キャンパスの近くにある「エチオピア」の常連だったりしたら、何も言えませんね。
逆に、岡澤は久我山在住時代、
スパイスの類を揃え、胃散のような味に調整して、酔いの覚めない朝に御飯にかけた気が。
そうか。それが胃散の起源だったか。
「カレーで胃散の効能は買えますが、胃散でカレーの味は買えません」というお話でした。
胃散目当てで調合した岡澤は言う。
「良薬は口に苦し」と言うんだから、胃薬として効果が高いとカレーっぽくない真実。
カレーの次の話題としては不適当だが、
また最近、暇で 2ch のスレなどを読んでいるが、読んでいて思い出したトリビア。
「彼女のマ〔検閲削除〕が臭いよお」だか、そんなスレ。
−赤ちゃんのあの香ばしい匂いは、乳酸菌の匂い−
あれ? 犯罪学で書いた教訓と似ているなあ。
「完成された結婚生活は芸術ではなく、ただのムダ知識の集大成」だと。
小川三四郎探偵事務所
代表取締役社長 岡澤代祐
sanshiro@sastik.com
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