小川三四郎の手記

  −東京大学理学部数学科神話−



 1 文字の発明者は数学者である



 「ウルク第3王朝の公文公」と呼ばれた数学者がいた。
彼は数学者の常として、数字遊び−ギャンブル−が大好きだった。

 ある日、公は妻に言われた。
小学2年になる長男の毅が、数字遊びで負けてばかりで困ると

 当時の数字遊びは、全て暗算だった。
だが体の弱い毅のことを心配した両親は、毅に暗算を強要できなかった。



 −当時、粘土板は高級品だった−


 公は、粘土板に数字を書くことを思いついた。
この「ウルク第3王朝の公文式算数教材」は、世界中に大流行した

 自らの教育方針に確信を得た公は、
「ウルク第3王朝の公文式国語教材」として、線文字を発明し尊敬された。


 ところが、文字を使用しても猿は猿のままだった。
文字の使用では知能の本質も変化せず、逆に人類は文字依存症になった

 事実が文字で記録されるようになり、訴訟が生まれ、
かえって生まれた不幸に心を痛めながら、「ウルク第3王朝の公文公」は他界した。







 2 土地の私有財産制の発明者は数学者である



 数学者たちは、図形を地面に書いて研究した。
街の人口が増えるにつれ、研究中の図形の上を横切る人が増えてきた

 研究の邪魔をされた数学者たちは、腹を立て、
「ここは俺の土地だから出ていけ」と所有権を主張し、囲いを作った。



 彼らの真似をした人々は、都市に囲いを作った。
「研究中の都市計画の上を横切るのを禁止した」囲いは、戦争を生んだ

 数学者たちは悲しみ、地面に図形を書くのを止めた。
ヨーロッパで城壁が発達したのは、彼らが数学者を尊敬していたからだと思う。








 3 貨幣の発明者は数学者である



 数学者たちは、石や木の枝を賭けて数字遊びをした。
だが一日中数字遊びをして、勝って山ほど石を持って帰ると、妻が怒る

 妻に怒られない数字遊びのルールが、考案された。
「金貨や宝石を持って帰れば妻は許してくれる」ことが帰納的に発見された。

 だから、金貨や宝石は有り難かった。
だが、数字遊びに使えるほどたくさんの金貨や宝石が、手に入るとも限らない。



 そこで、数学者は偉大な発明をした。
丸い石を探して、「食べ物と交換できる」という付加価値をつけることである

 この貨幣の発明で、平和が来るかと思いきや、
貨幣を使用しても猿は猿のままであり、逆に妻の怒りを買う不幸な人は依然多い。












 −以上、数学者による創世神話。













 4 数学者の種は売春で広まった



 肉食男子たちが、狩猟採取生活をしていた時代。
植物の生長に興味を持った、非常に高い知能の草食男子がいた

 女たちは、彼には見向きもしなかった。
だが彼は植物の観察を続け、薬草も、天気予報までも発見していた。


 −これが、ヒトの突然変異種、数学者である−


 ところが、突発的な気候変動で狩猟採取の危機が来た。
女心は秋の空で、女たちは彼を部屋に誘い、対価として食べ物を得た

 気候変動が、数学者の種を世界中に広めた。
天気予報のできない肉食男子は、筋肉を使って家を建て、数学者に対抗した。











 5 恋人を化粧させたのは数学者である



 食べ物欲しさに集まってきた女の子たちを見て、
草食男子の数学者は、彼女たちの体の、虫さされの腫れに心を痛めた

 彼は、ナス科のハシリドコロをマスカラ代わりに、
彼女たちの瞳孔を開かせるための目薬にしたり、虫除けのアイシャドーを塗った。

 彼女たちは、恋人を得ようと化粧をしたのでなく、
薬草に詳しい恋人に愛された結果、体中に化粧をすることになったのである。


 植物をおおかた理解すると、彼らは興味を失い、
植物が星座とともに変化することから天文学に興味を持ち、気象観測も始めた

 文明が、北回帰線の付近で栄えたのは当然である。
四季の変化がないと植物と星座が結びつかず、「年に一度見える星」は重要なのだ。












 6 愛の発見者は数学者である



 数字遊びをしていても、妻に離婚されない数学者。
数学的に解明できないこの現象を、「俺たちは愛されている」と仮定した

 それは、古代ヒッタイトでの流行語大賞となり、
数字遊びをするわけでない男たちも、愛がどうのこうの語るようになった。



 数字遊びで勝ち続ける限り、愛は存在する。
すると次の年、「俺たちは神に愛されている」が流行語大賞に選ばれた











 7 創造主の発見者は数学者である



 まだ、数字が発明されていなかった暗算時代。
言語も違う他民族の数学者も、自分と同じ数字の概念を持っていると判明した

 これに気付いた「ウルク第1王朝の加藤和也」は、
整数論を創始し、一般人向けに「鶴の恩返し」に模した紙芝居を作成し、発表した。

 一般人には、整数論は全く理解できなかったが、
与ひょうの家に歩いてゆくζ関数子さんが、世界を創造したことだけは理解した。


 ところが「ウルク第1王朝の井原総帥」は厳しく、
「本当に整数論を理解していれば、ノートを見ないで神話を語れる」と人々を叱った

 卒業単位を落とすことを心配した一般人は、総帥に懇願し、
「ノートを丸暗記するから、主である神の名を発音しない新ルールで妥協して欲しい」と言った。



 数学者たちは、新バビロニア王国の国王と親しくなった。
彼らは、無駄な知識を総動員して、新バビロニア王国の軍事研究のムダを指摘した

 「赤い色に塗らなくたって、槍は人を殺せます」

 「羊のツノを付けなくても、馬車は走ります」

 「足なんてただの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」

 新バビロニアの国王は彼らの提案を歓迎したが、
研究予算を削られた物理学者や化学者の猛反対で、駒場キャンパスに強制移住させられた

 帰国者は、本郷キャンパスに居場所を見つけられず、
迷惑な数学者一族は、こうして世界中に散乱し、後世の人が理解に苦しむ遺跡を各地に残した。



 総帥に忠実な「中世アラビアの織田孝幸」は、
堕落した民にジハード宣言をして、「賞賛される者」としてイスラム教を創始した

 人々に数学を教えることに限界を感じた数学者もいた。
そこで、「新しい数学の教科書」を提案した「古代バビロニアの高橋洋一」だった。



 こうして、パレスチナ問題が生まれた。











 8 偶像崇拝を禁じたのは井原総帥である



 確かに、偶像崇拝癖のある数学者もいた。
ところが、一般の人々に偶像崇拝を許すと、教科書の値段が高騰した

 確かに整数論の神は偉大だが、
教科書の値段が無限大に発散してしまうことは、総帥の願うところではなかった。

 だから、偶像崇拝を禁じた。
偶像崇拝癖のある数学者にも、フィギュアでなく現実の女を愛でるように命じた。


 本来なら、不労所得も禁じるべきだった。
その程度の労働での収入を許したら、整数論の神の価格が高騰するからである。

 神の価格が高騰すると困る、最大の理由は、
神の守り神である優秀な政治家が忙殺され、優秀な遺伝子が繁栄しないからである。

 ところが、総帥も妥協せざるを得なかった。
強制移住させられた駒場キャンパスでは、耕すべき土地が奪われていたからである













 9 新しい数学の教科書



 「古代バビロニアの高橋洋一」はローマに来て言った。
「難しい数学が理解できないといって思い悩んではいけない。私の話を聞きなさい」


 「あの迷惑な数学者一族を見なさい。
彼らは、世の中の役に立ちそうな研究は何一つしないが、女たちは彼らを養ってくれる

まして、あなた方をではないか」


 「天の国に富を積みなさい。無理して家の中に徴税人を飼い慣らすことはない」

 「貴方の右頬を打つ者には左頬をも向けなさい。
貴方を騙して税金を搾り取ろうとする者には、年金保険料をも支払いなさい


 「どうして喩えを用いて話されるのですか?」
 「だって、数式を用いて説明しても、貴男達は理解できないじゃないですか」


 彼の主張は、徴税人たちからは歓迎されていたが、
「だから数学者は病気!」という某婦人団体の裏切りで捕らえられ、磔刑に処された

 彼の死後3日目に「さらば徴税人」が刊行され、
ローマの書店に彼の顔写真が並ぶと、人々は「救世主が復活をされた」と奇跡を信じた。




 ああ、要するに数学者とは0の偉大さを理解できる知能のことで、
この数学者は、「0の偉大さが理解できない人は、ただ働けばいい」と言いたかった

 ところが、新旧の教科書が書かれたのはインド人の0の発見前で、
「その学問では何が偉大なのか」と問われて、「証明終了の天の声が偉大なのだ」と言っただけだ。


 すると、妻に怒られないために貨幣を発明したおかげで、
数字遊び−ギャンブル−は多くの興奮に満ちたが、その興奮が「0の発見」とは無自覚だった

 インド人が、これを0として発見してくれたおかげで、
アラビア世界では代数学が発展し、0の偉大さを理解しない人は良いカモになったわけだ。

 経済学者は、まだ0を発見していないだけだ。
「0の発見が偉大であることは、まだ証明されていない!」と言って、何度でも賭場に来る。


 −こうやって数学者に金を貢いでくれるから、『0の発見』は偉大なのだ











 10 旧い数学の教科書



 古の数学者たちは、自分たちの知恵と知識を集めた。
そして、知識の実践が導くであろう大きな過ちを予言して、警告した


 人々の期待に応えて、「数学者の育て方」も話した。
人類は進化のために知恵の実を食べて、性欲を進化させたことも知っていた

 「聖なる神は妬みの神である」と言って、
神は、食物連鎖の頂点に立った人類のために、嫉妬という仮想捕食者を育てたと話した。

 だから、知恵の実の息子は殺人を犯したのだ。
だが冷静に考えると、古の数学者もこの website の経済・動物行動学と同じ結論を出しただけ。



 つまり、太古の数学者は書物を残さなかったのではなく、
中学2年当時の亜友と同じく、それが数学書であることさえ人々は理解できなかったのだ

 すると、ぼくが太古の数学教育者と同じ路線の website を作ったのは、
「この娘には数学を教えても無駄だと思うけれど可哀想に」と、彼らと同じ立場だったのだ。

 一方で、知的障碍が治ってしまった亜友の視点では、
「岡澤は私を助けるために神様が使わせた預言者なのかも知れない」と、妙な宗教が始まった。


 要するに、先史時代の人々と数学者の出会いは、
中学2年C組の教室で出会ったぼくと亜友と同程度以上の知能格差があったのか・・・・・・

 この3000年で、科学技術も法律も発達したが、
「極端に頭の悪い女の子と知り合った数学者は全く同じことを考えて、同じ結論を出す」わけだ。




 そして、亜友の奇跡を聞きつけた人々は、数学者に、
「亜友の知的障碍を治した貴男だ。私の息子を数学者にする方法を教えてくれ」と言った

 数学者は、「食物連鎖の頂点」という意味で、
「人類は、何でも食べられる楽園にいた」と言ったのを、人々は真に受けたからである。

 ところが、それでは知恵が発達しないので、
「性欲の実を食べて、嫉妬の子を生み」と説明したのを、人々は真に受けたからである。

 それで、自分の高祖父も数学者で、曾祖父も数学者でと、
つまり2006年の誰かが、東大図書館で自分の家系図を調べるのと同様のことをした。


 そこから帰納的に得られる結論として、
普通の人が数学の恩恵にあずかるためには、救世主の降臨を待つしかないと言ったのだ

 つまり、Y子ちゃん=女神説が始まる。
要するに古代の傲慢な数学者も、「無理なものは無理だ。神に祈れ」と人々に言ったのである。

 それで、つい最近まで噂にしか知らなかったのに、
人類の英知を結集したつもりで書いた website が、旧い数学の教科書と同じ路線になったのだ。












 11 下らないことは全て数学者が教えてくれた



 空き缶回収班の班長に飽きた「古代エジプトの岡澤代祐」は、
仲の良い「古代エジプトの松田達弥」に命じて、「お前が班長をやれ」と言った。

 しかし、達弥には班長をやる自信がなかった。
「俺は数学がそこまで得意じゃないから、人々は俺の言うことを聞かないよ」と言った。


 もっともだと思った岡澤代祐は、大量のポマードを準備し、
「人々がお前を国王だと思いたくなる髪型にしてやるよ」と言って、彼の頭に香油を注いだ

 その髪型を見た人々は、恐れおののき、
「この方は神に選ばれた国王であるに違いない」と言って、文句を言わずに空き缶回収を始めた。

 その名残で、妙な風習が現代でも続き、
人間離れした顔やプロポーションをした人が服を着ると、人々は「素晴らしい」と言って真似をする。



 一人の娘が、岡澤代祐の前に進み出て言った。
「貴方が、神に選ばれた者であるという印を見せてください。そうすれば信じます」と。

 次の日、彼は約束の場所に、金属ナトリウム片を仕組んでおいた。
「見るがよい」といって、彼が水で濡らした月桂樹の枝を振ると、木々が発熱して炎上した

 そういうわけで、人類は平和だった。









 12 海を割ったのは数学者である



 数学者たち一行は、エジプト軍に追われていた。
計算すると、追いつかれる前には引き潮が来るから海を渡れるはずだった

 ところが、人々にはその計算が理解できなかった。
仕方なく数学者たちは、人々に麻薬を与えて不安を沈めさせ、引き潮を待ち、海を渡った。


 どうやら麻薬の副作用で、そういう話になった


 人々は、数学者に聞いた。「どうしたら数学者になれるのですか?」
山の上で、三日三晩考え続けた数学者は、降りてきていった。「早寝・早起き・朝ご飯」

 −待ち焦がれていた答えを聞いて、人々は熱狂した−












 13 方舟を造ったのは数学者である



 ブドウ畑を見た数学者たちは、
安定した水を得るために、ダムを造ろうと考えて建設を始めた

 疑問に思った人々は尋ねた。
数学者たちは、「人々を助けるための水の箱」を作っていると説明した。



 ダムに、水がたまり始めた。
十分に水がたまったと思った頃にダムが決壊し、大洪水になった

 助かった夫婦は一組だけだった。
「これは、予言された大洪水から逃れるための水の箱だ」と彼らは伝えた。











 14 高い塔を造ったのは数学者である



 各地で知り合った数学者が共同し、
星を観察するための雲より高い塔を造ろうと計画して、工事を始めた

 各地から集まったので、言語はバラバラだが、
数だけは共通の言語であり、高い塔の建立計画には支障にならなかった。

 塔が大木のような大きさになったとき、
上っていた一人の数学者が落ちて、記憶喪失になってしまった。



 説明しようにも、言語がバラバラで伝わらない。
神が隠した夜の秘密を暴こうとして、神の怒りに触れたのだと噂された

 その証拠に、似た話が今も数学界に伝わる











 15 麻薬の発見者は数学者である



 数学者は、数字遊びの最中にも、麻薬の刺激を楽しんでいた。
それで、麻薬を吸えば数学者になれると勘違いした人々が真似をした

 麻薬で数学者になれるはずはなかったが、
「麻薬を吸えば数学者になれる」と信じたプラシーボ効果で、効能が出てきた。

 この効能を信じて、麻薬に走る人が続出した。
だが、効能はプラシーボ効果程度のもので、多くの人が悪循環にはまった。



 そこで数学者たちは、麻薬の刺激を捨てた。
それで珈琲を愛飲する数学者だが、「珈琲を飲めば数学者になれる」わけでない。

 ただし、数学者は麻薬を始めた理由は別で、
「天文学の研究のためには、夜も起きている必要があったから」だと言われる。











 16 結婚制度の発明者は数学者である



 類人猿の性交体位は、後背位のみだが、
回転対称性を重視した数学者たちは、様々な体位を試みた

 女たちは、これを民族の恥と考え、
何故か人類だけは、群れの前で性交をしないという習性が定着してしまった。

 だが、数学者たちは知っていた。
しっかり子どもを作っておけば、毎日数字遊びをしていても怒られないと



 隣人からは尊敬され、家族からは軽蔑される数学者。
「愛は壊れやすい」ことを、最初に発見した数学者が結婚制度を発明した

 「なら愛は存在しないのか」と問われた「古代バビロニアのフェルマー」は、
「愛が存在しないことを証明するには、俺の寿命は短すぎる」と言い残して死んだ。

 だから経済学部に逃げた「古代バビロニアの高橋洋一」は、
「愛は存在する」と主張して経済を発展させ、「神が約束された救世主の到来」と言われたのである。













 17 知恵の実を食べさせたのは数学者である



 数学者たちは新しい土地を見つけた。
数学者たちは、先住民たちに仕事を与え、自分たちは数学の研究をした



 ところが、先住民たちは頭が悪かった。
そこで女に、「知恵の実を授けてやる」と、得意の回転対称性で子を宿した

 子は、女よりも少しは能力が高かった。
そして知恵の実から生まれたその子は、数学の研究を支えるために働かねばならない。











 18 ミロのヴィーナスを制作したのは数学者である



 「クレタ島の秋山仁」は、黄金比の美しさを主張し、
教育番組で花や貝殻のフィボナッチ数列を解説したが、理解されなかった

 世界中の人に黄金比の美しさを伝えようとした彼は、
黄金比の裸婦像を作って解説したところ、中学生や高校生には大人気だった。

 黄金比の美しさは、誰にも理解されなかったが、
「裸の女は芸術なのだ」ということだけは理解され、後世まで伝わった。













 19 音楽を発明したのは数学者である



 「古代ローマの中島さち子」は、フィボナッチ数列を教えるため、
8つの白鍵と5つの黒鍵でなる楽器を作成し、整数比の和音は美しいと教えた

 生徒たちは、誰も整数論を理解しなかったが、
「音楽は美しい」ことと、「彼女は音楽の女神だろう」ことだけは理解した。











 20 火を発明したのは数学者である



 古代ローマで大火事が起きた。
民衆はパニックになったが、1人の勇敢な数学者が恋人を救出した

男 「安心しろ。火は水をかければ消えることが証明されている
民 「すると、あなた様が火をお作りになったのですか」
男 「そういうわけじゃないが、そう思いたければそう思っても良い」

それで彼は、火の神にされてしまった。


 積分法は、2300年前にアルキメデスが発明した。
古代において現代の数学力を持っていた数学者は、神扱いされて当然だ。

 そして、この数学者たちにはシュールな共通点があった。

−夜になると、いつも星を眺めていると−











 21 月を発明したのは数学者である



 科学が発達した今、子どもも驚かないが、
「月が地球の影になる」なんていう月食の理屈を思いついた人は、偉大である

 「見てきたのか?」と思って聞き返すと、
「見てきたわけじゃないが、他に考えられない」と、その数学者は答えたのである。



 「月を作ったのは、たぶんあの方なのだ」
「だから毎日、夜空を見つめていらっしゃるのだ」と、ローマの人々は考えた

 彼は、月食の原因に悩んで、頭を使いすぎた。
そのために、「月を作ったのは私じゃない」と理解してもらう前に、他界してしまった。

 彼の仲間の数学者たちは、噂しあった。
「神が隠した夜の秘密を暴いたから、神の怒りに触れて命を失ったのだ」と。











 22 占星術を発明したのは数学者である



 数学者たちは、日食や月食に、潮の満ち欠けを予言できた。
民衆には計算法が理解できなかったが、「星を見ればよい」ことだけは分かった

 星を見るだけでは、未来の予言は出来ないが、
数学者への憧れのプラシーボ効果で、「何となく当たる気がする」と大評判になった。

 古代ローマやギリシャでは、数学者が星の動きを予測するのを、
「あの星は音楽の女神(※ 中島さち子)が作られたからだ」と、星座と神話が生まれた。



 このように話を整理してゆくと、
古代ローマかギリシャには、整数論を教えようとした迷惑な数学者一族がいたわけだ

 つまり、数学者自身が神話を作った場合、
「私は神ではないので、これは神からの啓示です」と一神教を創始して、預言者ポジション。

 逆に、民間伝承として始まった場合、
「定理に他人の名前がつくことに抵抗のない数学者文化」を反映して、多神教で神扱いされる。

 ゾロアスター教の善神と悪神は何か。
「岡澤代祐と亜友・父」のように、娘を奪い合って壮絶な喧嘩した数学者が昔もいたんじゃない?













 23 夜を発明したのは数学者である



 「古代エジプトの岡澤代祐」が、星を観察していると、
「古代エジプトの松田達弥」が歩いてきて、彼は翌朝、警察に連れられ帰ってきた。

 月食が地球の影であることを知っていた岡澤代祐は、
人間の心にも、影になって見えない心の闇があることを発見して、仲間に話した



 数学者は、闇を発見したのではなかった。
昼と夜は繋がっていて、両者は同じ学問で説明できることを発見したのである

 月食が、地球の影だと見破った数学者。
天体観測のような感覚で、影になって見えない心の闇を、探偵を名乗り解明していった。











 24 多数決を考案したのは数学者である



 自分たちの考案した理論は、正しいのか。
その理論を話すと、昼のように輝く顔と、夜のように沈む顔があった

 月を眺める習慣のあった数学者たちは、
「昼のように顔が輝くのは、神が我々の理論を認めてくれたからだ」と考えた。

 これは、現代のカウンセリングの原理である。


 理論の正しさに自信のない数学者は、
人々を集めて理論を説明して、昼の顔が多ければ自分に自信を持った

 その数を数えるために、陶片を利用して、
それはいつしか政治家たちに利用され、古代ギリシャの「陶片追放」となった。











 25 ナスカの地上絵を描いたのは数学者である



 これだけ、天文学が好きな数学者である。
宇宙人の存在を信じて、彼らにも見てもらえるような巨大な絵を描いたわけである

 人々の協力を集める政治力があったかと言うと、
「古代、数学者は神扱いされていた」のだから、人々も喜んで協力してくれたわけである。



 「古代エジプトの岡澤代祐」が、空き缶回収を始め、
理屈は理解できなくとも、岡澤代祐を慕った仲間たちが、空き缶回収に協力した

 「古代エジプトの松田達弥」と、彼は非常に仲が良く、
彼が「Y子ちゃん=女神説」を唱えてスフィンクスを作ったときも、皆や達弥が協力した。

 達弥は、「俺も何かデカいものが作りたい」と言い出す。
困った岡澤代祐は、天体観測だの、農閑期の公共工事だの、言い訳を考えてやった。













 26 Nash 理論を禁じたのは数学者である



 経済学者たちも数字遊びが好きだった。
確かに彼らは Nash 理論で強くなったが、ここ一番の勝負で確実に負けた

 中世アラビアの織田孝幸は、
「だから経済学者たちは結婚に失敗するのだ」と考え、民衆の Nash 理論を禁じた。


 Nash 理論による不労所得を認めると、
神と整数論の教科書の価格が無限大に発散し、争いの種になるからだった

 これは、井原総帥の教えの通りだった。
古代の数学者の発見も重要だと、預言としての定理に彼らの名を付けようと言った。

 「ただし、目が悪くなるからノートを見てはならない」

 人々は、分に応じた生活をし、
自らの脳裡に書き込める以上のことを主張してはならないと命じたのである。









 27 マフィアの原型を作ったのは数学者である



 「高い知能は、闇社会に流れる」のは正確でなく、
星の観察をする昔の数学者は、夜中も起きている必要があったのである

 それなら、数字遊びはどこで始まったかというと、
目当ての星座が空に昇るまで、退屈で退屈で仕方がなかったんじゃない?

 それで、夜中も起きているために酒や麻薬が必要で、
妻を起こして遊びに加えて、「酒と金と女」に溺れたろくでなしも大量発生した。



 彼らを理解できない世間の人たちだったが、
日食や潮の満ち欠けを完璧に予言するし、火の消し方も当然ながら上手だった

 悪い遊びを知り抜いているわけだから、
民衆に整数論を教える際にも、生徒の心をつかむ方法を熟知していたわけである。

 さて、ギャンブルは何故、禁止されたか。
おそらく遊び人の数学者が、中世の王様の女を誘惑してしまったからと言われる













 28 眼鏡を必要としていたのは数学者である



 ガリレオ・ガリレイの望遠鏡の発明を、数学者は喜んだ。
遠くの星が見られるからではなく、数式ばかり見ていて眼が悪くなったからだ

 つまり、高度な知能を持った数学者たちだが、
科学技術が眼鏡を発明してくれるまでは、NEETを続けるしかなかった。



 すると、プラトンの太陽の比喩は単なる事実である。
文明が発達した後では、失明するまで太陽の観測を続けた数学者を理解できない

 タレスは、日食を予言したと言われている。
あの時代に日食を予言するまで太陽を観測すれば、失明するのは明らかである。

 知能は、「死への衝動」なのである。










 29 電子計算機を発明したのは数学者である



 人々は、紙の使い方を知らなかった。
彼らは欲望のままに紙幣を印刷しては得意になって、様々な伝統を壊した

 呆れた数学者のフォン=ノイマンは、
「お前らに使わせるには紙は高級品すぎる」と言って、世界初の電子計算機を作った。













 30 数学史を書くのは数学者である



 官僚は、数学史のデータを持っていない。
一般n次元空間の民族にも理解しやすい「人類史」だが、受け入れてもらえるのかな?

 この数学史を読んだ数学者たちは言った。
「誰だ、こんなものを書いた奴は。ああ、織田先生の教え子か。それならば仕方がない」



 医学が進歩し、DNAの研究が進み、発生した疑問。
「人類の高い知能は突然変異的に発生したらしいけど、その人たちはどこに行ったのかなあ?」

財務大臣 「たぶん貨幣を発明したのは彼らだ。彼らに聞けば財政赤字の原因が分かる」

外務大臣 「たぶん神話に登場するのは彼らだ。彼らに聞けば宗教対立の原因が分かる」

 ふとしたことが原因で、数学者が政治家と知り合った。
「岡澤さんは、やり方は『非常識』で『滅茶苦茶』だが、信頼できる人だ、ちゃんと話を聞くように」

岡澤 「ああ、貨幣も私有財産性も、預言も、全部我々の先輩の思いつきですよ」

警察 「・・・・・・」


警察 「えー、被疑者の自白によりますところ、我が国の難題は全て数学者の思いつきらしく、全て裏が取れました」

議会 「・・・・・・」

 ああ、なるほど、玲奈ちゃんの自殺と同じだ。
「そんな大事件、誰も知らないのはおかしい」ではなく、中学1年当時は誰も信じなかった

 そういえば、「ご冗談でしょうファインマンさん」でも、
寮の窓枠を外した犯人捜しで、真っ先に名乗り出た真犯人のファインマンは相手にされなかった。



 すると、民主党内閣の最大の功績は、
世界で初めて、「数学者との日常会話」に成功したことかもしれない

 −予算が必要ない数学者は、政治家と友だちになりたいとは思わない−

秘書 「岡澤さんは昔、高校時代の女友達にストーカー扱いされて、議員会館に逃げてきたんですよ」




 数学者の発明品には共通の精神が見える。
遺書が見つかるとか、お金が尽きるとか、証明終了とか、どんな騒ぎも停止するようにできている

「亜友に『岡澤はストーカーだ』なんて言わせておいて、良いの?」
「たぶん、勘違いに気付いたら自動的に停止すると思う」

「岡澤君は、記憶喪失したくて、わざと耐えているように見えるのよ」
「記憶喪失するつもりで日記を付けている。必要な部分は、日記で復元できる」

 フェルマー予想を解決するために、いろんなものが無駄に発展しただけだ。


「無駄に発展したものを楽しむのが数学者の身上です」















 31 数学史を読めるのは政治家だけである



 ありとあらゆる学問分野から着想を得るため、
普通の人は、全部本当に正しいかどうか確認するための知識を持っていない。

 ところが、政治家は違う。

「次は化学の話題からの引用だ。担当部署に回せ!」

国民の税金は、数学者の言葉を翻訳するために使われる。





 元の話  「小川三四郎の手記」





小川三四郎探偵事務所
代表取締役 岡澤代祐
sanshiro@sastik.com