経済学部自費出版会社論


−実は岡澤は2003年、新風舎を訪問したことがあった。−




 要するに、ここの頁の冒頭に書いてある「黄色い冊子」である。
新風舎の話は原稿制作にも至らず流れたが、2005年には「黄色い冊子」が完成している

 結局、「恒河沙」の印刷所に頼んで、50冊だけ印刷してもらったのだが、
その「黄色い冊子」に至る前に、自費出版社を2社ほど回り、悪徳ビジネスを知った話である





 要するに、
「自費出版は作家デビューへの近道」などと銘打って、出版費用をぼったくる手法。

 だが、作家デビューの王道は各社新人賞なので、
喩えるなら「作家への裏口入学あっせん」のようなもので、騙す側も騙される側も・・・・・・





 ・ ビジネスとは何か


 要するに、相見積もりにかけたわけだが、
良心的な印象のM社と、悪徳ビジネス臭のするS社は、ともに130万という金額を出してきた

 −このS社は新風舎ではない、念のため−

 M社のA編集長は、良心的な印象なのだが、
S社の編集者Kは、ぼくの文章を褒めすぎているというか、ほめ方も壊れていた。


 そもそも問題の文章の内容は、ぼくの体験談なのだが、
奇抜な恋愛小説とも言えるし、公文国際学園への告発とも言えるし、ジャンル分けに困った


 それで、電話口では、

「ルポルタージュのようなものですかね」
「そうですか。実は私も若い頃、記者をしていたんですよ」

その後、初対面の挨拶で、大学生の息子がいることが判明する。



 それで、ぼくの体験談を読んだKさんは、
私も同じような体験をしたと、若い頃の半身不随体験と、自治体相手の訴訟体験を教えてくれた

 ぼくの、心の中の冷静な突っ込みは、
「そんな貴重な体験をした人が、何故こんな零細出版社勤務で、大学生の息子がいるの?」



 この時点で、S社を見切るわけだが、
S社に自費出版を固辞する手紙を書留で送りつけるまでには、21歳のぼくは1ヶ月を費やす。

 というのも、将来の探偵の嗅覚で、
「こいつら、いったいどんな商売で生活しているんだろう」を知りたかったからである







 2回目だったかの訪問で、
美しいデザインの表紙の1冊を、「我が社で出版した本です」と土産にくれた

 ちなみに、この本は売れたらしい。
書いたのが社長さんらしく、社員たちがあわせて300冊ほど購入したのだという。


 まあ、正しい自費出版の形ではある。


 この辺りで、ちょっとした計算から、
「増刷したら出版社は赤字なので配本は1000冊」というカラクリは読めていたが

 本を売ることにかけた出版社の意気込みを見てみようと、
その土産の1冊を開いた瞬間に、「やっぱり」という諦めに似た世の中の闇を知った。


 「『つまらない』を超えて『気持ち悪い』」


 高校1年の頃のぼくは、
綿貫先生からは数学者の道を示されていたが、国語教師からは文学の道を示されていた。

 だから、文章にそこそこ自信はあるものの、
小説家になるつもりで書いた文章ではないから、自費出版会社に持ち込んだまでである。

 つまり、この本の隣に自分の本が並ぶのは屈辱だと思った。





 130 万は、原稿の火葬費用というわけだ。
「安らかな旅立ちのお手伝い」に、丁寧すぎる装飾と製本をしてくれるわけである。

 そう考えると、葬儀屋ビジネスと同じ構図。
ただし、まだ生きている人でも平気で火葬して、葬儀費用だけ請求するが

 退職金は、葬儀費用のための貯蓄なのだ。




 さて、良心的な方のM社。
というのも、零細出版社がサイドビジネスに自費出版を扱っている感じだった

 しかし、金額は同じ130万。
「利益を確保するためのノウハウ」は同じと判断して、断りの手紙を送っておいた。

 「良心的な出版社には見えますが」の一筆を加えて。









 ・ ディーラーとプレイヤー


 マンションの話と並べて考えると、
日本経済は、プレイヤー(子)がディーラー(親)に勝てないようにできているのである

 ただ、プレイヤーに勝機のないギャンブルは有り得ない。
日本国民は八百長を見慣れすぎているから、どこにプレイヤーの勝機があるか分からないだけだ。

 だから、欲張って敗北するプレイヤーを見て、
床をモップで磨いている従業員たちは、安全という名の下に「今日もメシが旨い」というわけだ。


亜友・父 「16歳でうちの娘と婚約するなんて、その男、よほどのギャンブラーだな」


 そして、欲張ってストーカー扱いされる岡澤を見て、
床をモップで磨いている公文学園4期の同級生たちは、ああ、あんなに大騒ぎしたと。


2000年 亜友の退学阻止 賭け金100万円
2001年 亜友の知能回復 賭け金1000万円
2002年 亜友の大学合格 賭け金1億円
2003年 岡澤の東大合格 賭け金10億円
2004年 学園の連続殺人 賭け金100億円

以下略


 それでついに2011年、
日本の累積赤字国債を吹き飛ばす規模に騒ぎが大きくなったというだけか。

幹部 「さすがヨシ坊(岡澤由浩)の長男だぜ」

ああ。経済はマンションに始まって、マンションに終わるわけか。


 知らないものは、「知らない」で済むものを、
いつもの調子で「相模川上流での入水自殺」なんて書いたのが迷彩だった

警視 「奴の待ち牌は何だ?」
警部 「はっ。三色記憶喪失ドラ無しと思われます」

岡澤 「ロン。『動機のない殺人』累積赤字国債オール」

−悪気はありませんでした−











小川三四郎探偵事務所
代表取締役社長 岡澤代祐
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