証人尋問 亜友の傍聴日記


 亜友・父は娘に、裁判傍聴に行くから付いてこいと言った。

「あのストーカー男が、有印私文書偽造で追い込まれる最期を見物に行くぞ!」





 <<解説>> by 岡澤代祐


 あの・・・・・・もう少し、法廷に敬意を払おうよ。
スーパーフリー事件で捕まった、東大生の公判を観に行く時代錯誤社員並みだよ

 まあ、「数学者アルキメデス」のシナリオでは、
「業務妨害で留置所に入れられた岡澤に、亜友が面会に来て・・・」と続くのだが、

 岡澤の、有印私文書偽造を心配するなら、
裁判傍聴に行く前に、この乱暴な訴訟を止めてやるべきじゃないのかと思うのだが

 亜友は、H弁護士による反対尋問が始まり、
反対尋問で追い込まれる岡澤を想像して怖くなり、法廷から逃げ出したんだと思う。






 たぶん亜友は、H弁護士に陳述書を提出した段階では、
岡澤に有印私文書偽造の疑いがかかっていることなど、知らずに陳述書を書いた

 亜友・父は、あえて娘には、その事実を教えてやらなかった。
それで頑固な亜友は、父親の前で意地を張って、あえて岡澤に不利な陳述書を書いた。

 というのが、頑固な亜友・父の訴訟戦略である。


父親 「亜友。水曜日は、裁判傍聴に行くぞ」
亜友 「え、水曜日って。会社を休んでまで、見に行くの?」
父親 「あのストーカー男が、有印私文書偽造で追い込まれる最期を見物に行くぞ!」
亜友 「岡澤が、有印私文書偽造?」
父親 「知らんのか。あの男は、この訴訟で負けると、有印私文書偽造で刑務所行きなんだぞ」
亜友 「岡澤が、刑務所?」
父親 「そうだ。あの男は、偽造契約書で訴訟をした疑いで、反訴されている」
亜友 「偽造・・・契約書?」
父親 「お前が陳述書を読んだH弁護士が、反対尋問すれば確実に刑務所行きだ!」
亜友 「お父さん。そんな大事なこと、どうして教えてくれなかったの?」
父親 「お前も、嬉しいんじゃないのか。あのストーカー男が、ついに刑務所行きだぞ!」
亜友 「・・・・・・」
父親 「裁判傍聴に行くことで決まりだな。会社には、お父さんの方から連絡しておこう」


ええと、ぼくの人生を何だと思っているんですか?



 すると、法廷の責任者であるK裁判官(女性)は、
父親に付き添われて入ってきた亜友の、「岡澤を助けて下さい」光線を浴びていたのか

 裁判官が、H弁護士に耳打ちしたのって・・・・・・
刑事訴訟の法廷なら良くある光景だから、弁護士も裁判官も動揺はしなかった・・・というわけか。

 それでH弁護士は、恥ずかしそうに笑ったのか。



 コラム 「偽造私文書の怪」  ← 岡澤の想像を超えた人たち













 なかなか、陳述書を開く勇気が出なかった岡澤だが、
亜友・父の「ブラック オクトウバー」の真相に気付いて、陳述書はどうでもよくなった

 亜友・父は、岡澤の website を読み込んで、
足りない部分を全部ゲームソフトの中に詰め込んで、岡澤に送ってよこしたわけである。

 あのソフトは、最初から岡澤を標的に作成した、
日本インターネット史上に残る「悪質な『トロイの木馬』」であり、岡澤以外に害をなさない。



 具体的には、

 亜友を含む岡澤の同級生は、すでに玲奈ちゃんの自殺を知っていること。

 岡澤と亜友の共通の友人の羽生が、記憶喪失気味であること。

 (あの報告書を書いたのは石黒先生ではなく、) 遠山先生は重要人物であること。

 米国の探偵社は、ネット閲覧情報の傍受だけでなく、送受信メールの傍受もしていたこと。



 ということは、亜友の意思とは無関係に、
亜友・父は娘を、岡澤のもとに嫁に出す決意を固めているということである

 ここまでするには、100万や200万ではなく、
岡澤に宛てた「ブラック オクトウバー」開発関係費に、1000万円を計上していても不思議ない。

 すると亜友は、岡澤との結婚が嫌というより、
自分の意思と無関係に話が大きくなっていき、勝手に話が進んでゆくのが嫌なのである。



 ならば、この陳述書は岡澤の問題ではなく、
「亜友・父が、どれだけ娘に言うことを聞かせられたか」の問題である

 すると、この陳述書中の岡澤への反感は、
「心理学的には父親に対する反感の投射に過ぎない」と結論し、開いた。



 −我ながら、もの凄く自分勝手な理屈である−
(と思いつつ推理を始めたが、次頁では見事にこの結論に至っている)





 結果は、岡澤を非難する内容だったのだが、
20歳まで父親の隠し子を知らされなかった不満を、岡澤にぶつけただけと解釈!

 −心理学って、都合が良いね−



 実は、公文国際学園(をモデルにした漫画)には、
「本当のお父さんは死んだ」話が嘘と分かったショックで、嘘に拒絶反応を示す話がある

 これも、彼氏に八つ当たりする系の話である。
亜友は、公文国際学園が舞台の吉住渉先生の虚構に、「忠実にすねている」のかもしれない。

 待てよ、中2当時の亜友は『りぼん』を読んでいた。
すると現在の亜友の行動には、深層心理に『ミントな僕ら』の裏付けがあるのかもしれない。



 すると、高校1年の岡澤が亜友から家の話を聞いた時に、

岡澤 「弟がいるって話は、聞いたことない?」
亜友 「どういうこと?」

岡澤 「お父さんの、隠し子」
亜友 「ううん。聞いたことないなあ」

岡澤 「ごめん。漫画の読み過ぎだね。忘れて」
亜友 「うん。漫画の読み過ぎだよ。忘れる」

 という会話があったわけだが、


岡澤の想定する漫画 : 自由国民社 「法律の抜け穴」
亜友の想定する漫画 : 集英社 「りぼん」


だったわけか。


 これなら、教師の思考回路が追いつかなくても無理はない



 ただし、亜友の年齢を考えると、
亜友・父の方には、深層心理に岡田あーみん『お父さんは心配症』の裏付けは、無いか。

 ここまで無駄な知識を引っ張り出せるからには、
亜友と喧嘩して10年間、岡澤はよっぽど暇を持て余していたとしか思えないのだが。


 すると、亜友を、牧村未有に重ねると、

 隠し子の存在を教えてくれなかった父親への反感を、
「最愛の恋人の自殺を教えてくれなかった岡澤への反感」に、重ねているのである





 さらに、牧村未有を引用すると、

 お母さんの嘘は、私のためを思ってついた嘘だけど、
「のえる」の嘘は自分のためについた自分勝手な嘘だから、許せないの!



・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。


 逆じゃないか?


 岡澤の嘘は、私のためを思ってついた嘘だけど、
お父さんの嘘は自分のためについた自分勝手な嘘だから、許せないの!



 ということは、
「父親への反感を岡澤に投射」説には、疑問が残る点があるのである















 で、具体的に陳述書の内容に踏み込むと、
「私は知的障碍じゃない!」という、空虚な反論が響いてくるのである

 これのどこが空虚な反論かというと、
第一に亜友が、岡澤が身体障碍者であることを忘れるはずはないから。

 これが障碍者差別への反論なら分かる。
だが身体障碍者の岡澤に、知的障碍を差別する意図はないと亜友は分かる。



 さらに、中2の教室の出来事を知る相手に、
「私は知的障碍じゃない」と反論しても空虚なだけで、意味のある反論でない

 「亜友ちゃんのリボン」に書いた話だが、
授業中に後ろを振り向いて、後ろの席の生徒に迷惑をかける女の子なのである。

 岡澤と亜友は、出席番号が前後していた。
つまり、中2−Cの春に自分と亜友の前後左右に座っていた生徒は分かっている。



 ということは、岡澤の右側前後の座席配置、
12番のK井さんや、6番のU井君や、5番のI村さんが証言するはずだ

 あれだけ周囲に迷惑をかけた生徒は、忘れない。
だいたい亜友は、その授業態度の悪さが原因で、鎌倉女子大の初等部を追い出された。

 そもそも、公文学園との訴訟なのだから、
当時の亜友の知能検査の結果とか、公文式学習の進度とか、反証は容易なのだ。





 ならば、亜友の反論は何かと言うと、
代表して二人分の陳述書を提出する父親に、当てつけた言葉なのだろう

 亜友は、岡澤の知能を万能だと信じ、
「岡澤なら私の本心を分かってくれるはず」と、自分に嘘をつくことも珍しくない。

 つまり、亜友は様々な妥協点を探し、
「この程度の嘘なら、岡澤が訴訟で負けるはずがない」と信じて、陳述書を書いた。

 さらに、娘の陳述書を見た父親も、
「この程度の嘘なら、岡澤君が訴訟で負けるはずがない」と考えて、陳述書を提出。



 岡澤が言うのも何だけど、もう少しH弁護士に敬意を払ったらどう?







 では、何故これが亜友の妥協点なのかと言うと、
亜友は、知的障碍時代の自分に対する両親の扱いが、許せないのじゃない?

 母親は、夫の隠し子から会社を取り返すのに必死で、
知的障碍の自分と岡澤を結婚させて、岡澤に会社を継がせるのが目的だった。

 父親は、自分のことを可愛がってはくれたものの、
自分の知的障碍を「厄介者」扱いして、岡澤と結婚させて問題を片付けようとした。



 すると、親の前では「知的障碍」の知の字も出さない。
だから岡澤の前でしおらしく知的障碍を認める自分を、父親に見られたくない

 そこで、岡澤が「びっくり」するのを承知で、
「私は知的障碍じゃない!」という陳述書を、最後の最後で提出したのじゃないか?



 要するに、

 亜友 「私にはお父さんもお母さんも必要ない。私は一人で生きてゆくんだ!」
と言ってしまった手前、

 亜友・父 「お父さんやお母さんは必要なくとも、岡澤君は必要なんだな」
と父親に言われるのが、嫌で嫌でたまらない。


 だから、初回は岡澤の花束を受け取ったが、
すぐ横でしたり顔をしている父親を見て、鳥肌が立って送り返したという可能性もある。

 そして、その様子を見た亜友・父はやりきれず、
翌朝「実在の高校を舞台にした最低小説が書かれてた件【東大】」をやらかしたのである。




 つまり、岡澤とは結婚したいが、
父親の喜ぶ顔を見たくないばかりに、結婚から逃げ回っている印象が否めない

 要するに、「純粋に父親への反感」説である。



 ただ、似たような家庭を持つ岡澤には、
亜友・父には悪いが、亜友の気持ちが良く分かる部分も、それなりにあるのである









 さらに、父親の方の陳述書だが、
あそこまで遠回しに「ブラック オクトウバー」を送りつけた人が、娘の前で?

 否。否。否。
千べん否定して、さらにもう一つ否

 娘の前では、素直に岡澤のことを認めることができないから、
あんなにも遠回しな方法で、岡澤のことを応援してくれている亜友・父なのである。



 あれは、H弁護士の陳述書の取り方が悪かった。
頑固な娘は、父の前で本心を打ち明けず、頑固な父は、娘の前で本心を打ち明けない

 なるほど。





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代表取締役社長 岡澤代祐
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